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vol111 感染予防スタッフ配置に関する推奨事項のギャップ解消:APICスタッフ配置計算ツールベータ版の結果
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背景

既存文献によれば、「画一的な」感染予防管理(IPC)要員配置の推奨は、プログラムの複雑性ニーズを十分に考慮していない。本プロジェクトの目的は、リスク要因と複雑性要因を活用し個別化されたIPC要員比率を生成する計算ツールを作成・検証することである。

方法

人員配置ニーズを予測する要素と、アルゴリズム内の要素最適化を可能にする複数の調査質問を組み込んだオンライン調査ベースの計算ツールを開発した。病院特性、人員配置比率、人員配置に関する認識、およびアウトカムを分析し、今後のリリースに向けた最適な質問項目とベンチマークを決定した。

結果

参加390病院における感染予防専門職のフルタイム換算1人あたりの病床数の中央値は121.0床であった。計算ツールは回答施設の79.2%で人員配置が期待値を下回ると判定した。以下の様々な医療関連感染に関して、標準化感染比が高いレンジにあることと人員配置が少ないこととの間に有意な関連性が認められた:中心静脈カテーテル関連血流感染(p = 0.02)、カテーテル関連尿路感染症(p = 0.001)、クロストリジオイデス・ディフィシル感染症(p = 0.003)、結腸手術後手術部位感染(p = 0.0001)。

結論

この新規アプローチにより、各施設は個別要因に基づいて感染予防管理プログラムの人員配置が可能となる。計算ツールの将来バージョンは本知見に基づき最適化される。今後の研究では、人員配置が患者転帰およびスタッフ定着率に与える影響を明らかにする。

訳者コメント

本論文は、感染制御担当者の適正な数に関する検討と、実際に配置されている数と医療関連感染発生状況の関連を検討した論文である。適正数に関しては、実際の業務状況に応じて算定可能なシステム(計算ツール)を作成した。実際の配置数に関しては、390施設の現状を調査したところ、病床数50以下の小規模医療機関では担当者1人あたりのベッド数が50程度、100~300床の中規模医療機関では130程度、300~400床の規模の医療機関では160程度と最も多く(担当者配置が相対的に少ない)、750床を超える大規模医療機関では130程度とやや少なかった。一方、計算ツールを用いて研究参加施設の必要担当者数を計算したところ、担当者1人あたりのベッド数が69と、現状(中央値121)よりかなり少ないベッドしかカバーできず、全体の80%の施設で担当者数が十分でないという結果となった。
そして、担当者の実際の配置数と医療関連感染の発生状況をみると、担当者が多い施設の方が様々な医療関連感染の発生が少ない傾向がみられ、統計学的に有意であった(表)。このことから、筆者らは、現状としてアメリカの医療機関の感染制御担当者配置数は少なすぎること、配置数を増やすことで医療関連感染を減少させることに繋げられる、としている。
感染制御担当者の適正な数に関しては、アメリカで担当者が設置されはじめた黎明期には1人あたり250床をカバーするという数値が仮に提示され、その後2000年頃には各種調査で100~120床をカバーする程度まで増員されてきていた。筆者も2010年頃にアメリカの10を超える病院の感染制御活動を見学したが、概ね1人あたり100床をカバーしているという印象を持っていた。今回の調査では、それから15年も経つのに感染制御担当者配置数にほぼ変化がないこと、理想的な感染制御プログラムを展開するにはまだまだ十分ではないことが浮き彫りになった。
日本の現状では500床を超える大規模医療機関でも感染対策専従看護師が1名のみ配置されているという例も多数あり、アメリカよりはるかに少ない人員で感染制御実務を担っている。その一方で感染対策に関する加算の点数は年々増点されているので、感染制御実務担当者が少ない現状に関して様々な方面に対して訴求し、増員を行い、より良質な感染制御を展開する必要があるだろう。