重要性
血管内カテーテルは医療において不可欠であるが、医療関連感染の主要な原因の一つであり続けている。挿入前の最適な皮膚消毒が鍵となるが、最も効果的な消毒剤、濃度、および製剤については依然として不明確である。
目的
カテーテル関連感染症(CRI)の発生率が最も低いクロルヘキシジングルコン酸塩(CHG)またはポビドンヨード(PVI)の濃度と製剤を特定すること。
データソース
PubMed、EMBASE、Cochrane Central、Scopus、Web of Science、およびCINAHLを、2025 年1 月7 日時点で制限を設けずに検索した。また、臨床試験登録データベースや、関連研究およびガイドラインの参考文献リストも精査した。
研究の選定
血管内カテーテル挿入前のCHG またはPVI ベースの皮膚消毒薬を比較したランダム化比較試験(RCT)のうち、少なくとも1つのCRI アウトカム(カテーテル関連血流感染[CRBSI]、カテーテル先端の保菌、または局所感染)を報告しているものを対象とした。2名の独立した査読者がタイトル・抄録・全文をスクリーニングした。
データの抽出と統合
2名の査読者が、「系統的レビューおよびメタ解析のための推奨報告項目(PRISMA)」ガイドラインに従い、独立してデータを抽出した。バイアスのリスクは、コクラン・バイアスリスク評価ツール2 を用いて評価した。相対リスク(RR)と95%信頼区間(CI)を推定するために、ランダム効果ネットワークメタ解析(NMA)を実施した。
主な評価項目および測定指標
主要評価項目は、CHG製剤またはPVI製剤に関連した、CRBSIの発生率・カテーテル先端のコロニー形成・局所感染であった。
結果
16件のRCT(患者7,803名、カテーテル11,985本)が選択基準を満たした。水性製剤と比較して、アルコール系製剤は一貫して感染率が低く、特にイソプロパノール(IPA)はエタノール(EtOH)よりも優れていた。アルコール系PVIと比較して、アルコール系CHGはCRBSI(RR、0.70[95% CI、0.45~1.08])、 カテーテル先端のコロニー形成(RR、0.42[95% CI、0.37~0.48])、および局所感染(RR、0.40[95% CI、0.23~0.70])の発生率が低かった。高濃度のCHG(1%以上)は、低濃度と比較して、CRBSI(RR、0.31[95% CI、0.19~0.52])およびコロニー形成(RR、0.3[95% CI、0.30~0.42])をさらに低下させた。局所的な有害事象はまれであり、アルコールベース製剤でわずかに頻度が高く、CHGとPVIの間では同程度であった。

結論と意義
このRCTに対するNMAにおいて、IPAに高濃度で溶解したCHGは、CRIの発生率が最も低いことと関連していた。これらの結果は、アルコール性PVIおよび水性製剤を、CHGやアルコールが使用できない状況に限定して使用すべきであることを示唆している。
訳者コメント
本研究の対象となったRCTで研究対象とされたカテーテルの種類のほとんどが中心静脈カテーテル(CVC)であり、末梢ラインとPICCが多少含まれる程度である。従って、本解析の結果はCVCに関するものと考えて良い。CVCの挿入前の皮膚消毒とカテーテル関連血流感染のリスクについて、CHGアルコールとPVIアルコールの比較に関しては、本研究でも解析対象のひとつとなっているフランスのMimozらの有名な研究*によって既に11年前に結論が出ている。すなわち、CHGアルコールがPVIアルコールより有意にリスクを低下させる。
本論文の意義は、それも含めて消毒薬がCRBSIリスクに及ぼす影響を多角的に検討した点である。例えば、アルコール製剤を使えない患者に対して水性CHGと水性PVIのどちらがよいか、またそもそもアルコールの上乗せ効果があるのか(CHG含有ならそれで十分なのか否か)、などが検討されている。
その結果、前述の結論が改めて確かめられたのに加えて、アルコール含有製剤と非含有製剤との比較では、ベースがCHGであってもPVIであっても、アルコール含有の方がCRBSIのリスクを大きく低下させることが示され、アルコール単体の有効性が示された。更に、CHGの濃度が高い方がリスクを有意に低下させ、また基質の薬剤にかかわらずIPAはEtOHよりもリスクを有意に低下させることも判明した。
習慣的に使用しているCVCカテーテル挿入前の皮膚消毒薬であるが、その組成によってこれだけ大きな感染リスクの相違があることは意外と知られていないし、意識もされにくい。本論文は改めて、皮膚消毒薬の選択の重要性を浮き彫りにしている。
*Mimoz O, et al; CLEAN trial investigators. Skin antisepsis wit h chlorhexidine-alcohol versus povidone iodine-alcohol, with and without skin scrubbing, for prevention of intravascular-catheter-related infection (CLEAN): an open-label, multicentre, randomised, controlled, two-by-two factorial trial. Lancet. 2015;386(10008):2069-2077.







