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vol.114 COVID-19の世界的大流行の間に行われたユニバーサルマスキングはNICUでのMRSAやMSSAの獲得を減少させたか?
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目的

COVID-19パンデミック中のユニバーサルマスキングが、新生児の黄色ブドウ球菌の獲得を減少させたかどうかを評価すること。

研究デザイン

我々は、COVID-19の世界的大流行(パンデミック)に伴うユニバーサルマスキング実施前後3年間にわたり、第3次地域NICUに入院した新生児を対象とした後ろ向きコホート研究を実施した。多変量比例ハザード回帰モデルを用いて、固定効果および時間依存的な新生児の特性を調整した上で、マスク着用がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)およびメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)の獲得までの期間に及ぼす影響を評価した。

結果

2,728例の新生児(パンデミック前の1,446例とパンデミック後の1,282例)を分析した。84.9%が院内出生児であり、平均在胎期間は34週6日(標準偏差:4.2週)、平均出生体重は2,500グラム(標準偏差:975グラム)であった。新生児1人あたりの監視培養の平均回数は3.07回(標準偏差:3.31回)であった。共変量を調整した場合、ユニバーサルマスキングはMRSAの獲得減少と関連していた(ハザード比:0.43、95%信頼区間:0.19-0.99、p=0.04)が、MSSAについては関連が見られなかった(ハザード比:1.27、95%信頼区間:0.87-1.85、p=0.21)。共変量のうち、気道用デバイスおよび母親の黄色ブドウ球菌保菌の有無が、それぞれMRSAとMSSAの獲得と関連していた。

表 ユニバーサルマスキング、新生児の特性と黄色ブドウ球菌の獲得に関する多変量関連

結論

ユニバーサルマスキングによって、NICUにおけるMRSAの獲得は60%減少したが、MSSAの獲得に変化は見られなかった。マスク着用は、MRSA保菌者である医療従事者による感染拡大を抑制する可能性がある一方、MSSAは親との肌と肌の接触を通じて獲得される可能性が高く、そのためマスク着用による影響を受けなかったと考えられる。

訳者コメント

 新生児は様々な環境や要因から病原体を獲得し、常在細菌叢を形成していく。MRSAやMSSAを含めた皮膚の常在菌は、母親や周辺環境などから獲得する。本研究はそういった新生児の病原体獲得を、COVID-19流行中に実施したユニバーサルマスキングとの関連で検討した、興味深い視点の論文である。その結果、MRSAとMSSAで異なる要因やリスク因子が明らかになった。
 ユニバーサルマスキングによって新生児のMRSA獲得が減少したことから、今後NICUにおいてスタッフはユニバーサルマスキングを実施・継続すべきという議論に発展するかもしれない。MRSAの医療環境における伝播は、手指衛生の遵守によってある程度の制御が可能であるが、スタッフにはある一定の割合でMRSAキャリアが存在することや、新生児に顔を近づけてケアを行うというNICU特有の状況を勘案すると、手指衛生の遵守だけでは制御できないとも考えられる。一方、MSSAの伝播は母親が関連していることが示されているが、母親とはNICUから退室した後も継続して接触していくことになるので、MSSAの保菌がリスク因子となるような医療関連感染症(中心ライン関連血流感染など)の懸念がある場合を除き、MSSA保菌者の母親との接触を控えるといった措置は不要だろう。