消毒薬の選び方

人体に対する消毒薬の選び方

消毒薬は抗生物質に比べ、抗菌スペクトルが広く、かつ殺菌力も強い。これは、裏を返せば、消毒薬は抗生物質よりも、毒性が高いといえる。したがって、消毒薬の人体への適用では、細心の注意を払いたい。たとえば、腹膜腔や消化管などの体腔内への適用や、創部や粘膜への誤った濃度の適用は、ショックの原因になる。

1.創傷部位

消毒薬はいずれも細胞毒性を示すので、清潔創への適用で治癒の遅延が生じる1,2)。したがって、創傷部位への消毒薬の使用では、抗菌効果のみならず細胞毒性にも配慮する必要がある。創傷部位にポビドンヨード(イオダインM消毒液10%など)や0.05%クロルヘキシジン(ステリクロン®W・R液0.05%など)等を用いるのであれば、感染または微生物汚染がある場合に限定して、菌消失後は5日間を超えて用いないようにするなどの注意が必要である。

なお、ポビドンヨードを希釈すると、毒性が低下するものの3)、血液などの有機物で不活性化を受けやすくなる。したがって、創傷部位へのポビドンヨードの使用では、原液を用いるのが望ましい。表1に、創傷部位に用いられる消毒薬の使用上の留意点について示した。

表1. 創傷部位に用いられる消毒薬の使用上の注意点

消毒薬 使用濃度 留意点
  • ポビドンヨード
    • イオダインM
    • イソジン
    • ネグミンなど
原液
  • 洗浄剤含有製剤(イオダイン®スクラブなど)、アルコール含有製剤(イソジン®フィールドなど)、および原液のガーグル製剤(イオダイン®ガーグルなど)を創傷に用いてはならない(洗浄剤やアルコールが刺激性を示す)
  • クロルヘキシジン
    • ステリクロンW
    • ヘキザック水W
    • マスキン水
    • グルコジンW水など
0.05%
  • 誤って0.5%液などの高濃度液を用いるとショック発現の可能性がある
  • オキシドール
    • オキシフルなど
原液~2~3倍希釈
  • 発泡による異物除去効果
  • 新たに表皮が形成された部位には用いない
    (治癒組織の潰瘍化が生じるため)
  • 次亜塩素酸ナトリウム
    • ピュリファンP
    • ミルトン
    • ミルクポンなど
0.01%
(100ppm)
  • デブリードメント効果がある
  • 溶血作用があるので、連用は避ける
  • 創傷適用は未認可
アクリノール 0.05~0.2%
  • 本薬での治療にもかかわらず原疾患の増悪が見られる場合には、副作用(潰瘍、壊疽)を考慮する

2.手術野の皮膚

手術野の皮膚には、人体に適用可能な消毒薬でかつ強力な効果を示す消毒薬を選択する。0.5%クロルヘキシジンアルコール(ステリクロン®B・R・Wエタノール液0.5など)、ポビドンヨード(イオダインM消毒液10%など)、および63%エタノール含有ポビドンヨード(イソジン®フィールド)等が有用である4)。また、0.5%クロルヘキシジンアルコールを使用後にポビドンヨードを用いる方法は、引火の危険性を低下させる。

なお、脳外科手術などで、消毒薬が眼や耳に入る可能性がある場合には、クロルヘキシジン、アルコールおよび洗浄剤含有ポビドンヨード(イオダインスクラブ液7.5%など)は使用禁忌である5-7)。すなわち、0.5%クロルヘキシジンアルコールや63%エタノール含有ポビドンヨードを用いてはならない。ポビドンヨードのほうを用いる。

3.手術野の粘膜

手術野の粘膜にはポビドンヨード(イオダインM消毒液10%など)、0.01~0.025%の塩化ベンザルコニウム(ザルコニン®液0.025%など)ならびに塩化ベンゼトニウム(ベゼトン®液0.02%など)、 0.005~0.01%次亜塩素酸ナトリウム(100~200倍希釈ピュリファン®Pなど)が用いられる。これらの消毒薬のうち、特に、ポビドンヨードが汎用されている。なお、次亜塩素酸ナトリウムは血液凝固遅延作用を示すので、粘膜の創傷部位への使用は避ける8)

4.腟・外陰部

腟・外陰部に適用のある消毒薬は0.02~0.05%塩化ベンザルコニウム(0.025%ザルコニン®液など)、0.02%塩化ベンゼトニウム(0.02%ベゼトン®液など)、および産婦人科用イソジン®クリームの3剤である。また、保険適用はないものの、20倍希釈ポビドンヨード(20倍希釈イオダインM消毒液10%など)も使用されている。これらの薬剤は、細菌、カンジダおよび腟トリコモナスに抗菌力を示し、さらに産婦人科用イソジン®クリームや20倍希釈ポビドンヨードはウイルスにもある程度の効力を示す。

なお、ポビドンヨードを妊婦の腟へ頻回使用すると、胎児や新生児に甲状腺機能低下症が生じる可能性がる9)。したがって、妊婦の腟へは、週1回までの使用にとどめる。

5.口腔

口腔粘膜のうがい(洗口)には、15~30倍希釈ポビドンヨードガーグル(15~30倍希釈イオダインガーグル液7%など)、10倍希釈オキシドール(10倍希釈オキシフル®など)、0.05~0.1%アクリノール、および0.004%塩化ベンゼトニウム(ネオステリン®グリーン)などが用いられる。

また、口腔粘膜の創傷部位には、ポビドンヨード(イオダインM消毒液10%など)、15~30倍希釈ポビドンヨードガーグル、0.05~0.2%アクリノール、原液または2倍希釈オキシドール、および0.01~0.025%ベンゼトニウム塩化物(ベゼトン®液0.02など)等が用いられる10)

なお、オキシドールを口内炎や歯肉炎でのうがいに用いて、舌や口腔粘膜に潰瘍を生じたとの報告がある11)。また、ポビドンヨードガーグルの長期間にわたる使用で、血中ヨウ素濃度の上昇や歯牙の着色を生じることがある。したがって、ポビドンヨードガーグルの洗口使用は、14日間以内とするのが望ましい12)

6.外眼部および結膜嚢

術前の外眼部(眼周囲皮膚)の消毒には、ポビドンヨード(イオダインM消毒液10%など)や0.02%クロルヘキシジン(ステリクロン®W液0.02など)が使用可能である13-17)。ただし、0.05%を超える濃度のクロルヘキシジンを外眼部に用いてはならない。なぜなら、0.05%を超える濃度のクロルヘキシジンが誤って結膜や角膜に接触すると、眼障害の原因になるからである18,19)。また、術野消毒に汎用される0.5%クロルヘキシジンアルコール(ステリクロン®B・R・Wエタノール液0.5など)も外眼部に用いてはならない。なぜなら、誤って眼に混入すると、0.5%クロルヘキシジンのみならずアルコールが結膜や角膜を傷害するからである20)

一方、術前の内眼(結膜嚢)の消毒には、原液~20倍希釈ポビドンヨード(原液~20倍希釈イオダインM消毒液10%など)、4~8倍希釈ポリビニルアルコールヨウ素(4~8倍希釈のPA・ヨード®液)、および0.02%クロルヘキシジンがあげられる13-17)。これらのうち、ポビドンヨードは米国では2倍希釈ポビドンヨード点眼液が市販されていて、術前の点眼に用いられている。しかし、わが国ではポビドンヨードの内眼への適応は認可されていないので、本薬の内眼への使用は医師の責任のもとで行わなければならない。

内眼への消毒薬の使用では、いずれの消毒薬であっても適用後2分間以内に滅菌生理食塩水などでのリンスを行う必要がある。

なお、洗浄剤含有ポビドンヨード(イオダインスクラブ液7.5%など)では、洗浄剤が眼に強い毒性を示す21)。したがって、本薬は内眼にはもちろん、外眼部にも使用不可である。

7.注射部位(血液培養時での注射部位を除く)、透析穿刺部位

アルコール(消毒用エタノール、70%イソプロパノール)、ポビドンヨード(イオダインM消毒液10%など)、63%エタノール含有ポビドンヨード(イソジン®フィールドなど)、 0.05~0.5%クロルヘキシジン(ステリクロン®0.05%綿球Pなど)、0.5~1%クロルヘキシジンアルコール(ステリクロン®0.5%AL綿球など)、および0.02~0.1%塩化ベンザルコニウム(ザルコニン®0.025%綿球など)等を用いる22-30)

これらの6種類の消毒薬のうち、アルコールが汎用されている。アルコールはポビドンヨードに比べて、すみやかな殺菌効果を示し、かつ速乾性である。

ポビドンヨードは着色が生じるものの、消毒部位がよく分かるといった利点もある。

63%エタノール含有ポビドンヨードは、ポビドンヨードに比べてより速やかな乾燥化と、より強い殺菌効果が期待できる。

一方、クロルヘキシジンでは、グラム陽性球菌に対する優れた抗菌効果と皮膚吸着による抗菌力の持続効果が期待できる。また、0.5~1%クロルヘキシジンアルコールでは、クロルヘキシジンの持続効果に加えて、アルコールの速やかな殺菌効果が期待できる。

この他、注射部位には強力な消毒薬は不要との観点から、0.02~0.1%塩化ベンザルコニウムも汎用されている。

表2に、注射部位に使用できる消毒薬の単包製剤を示した。消毒薬の単包製剤には、清潔に扱える、持ち運びに便利、使い残しがないなどの利点がある。一方、そのつどの開封がやや面倒なことや、コストが上昇する場合があるなどの欠点もある。

表2. 消毒薬の単包製剤

成分 商品名  
アルコール エタコット
サラヤ アルコール含浸綿
エレファワイパーE
ワンショットプラスP EL-Ⅱ
ステリコットα
アルウェッティONE、など
エタコット綿球、など
消エタコットン棒プッシュ綿棒El、など
0.5%クロルヘキシジンアルコール ステリクロン0.5%AL綿球
ヘキザックAL0.5%綿棒
1%クロルヘキシジンアルコール ヘキザックAL1%
ヘキザックAL1%綿棒
2%チオ硫酸ナトリウム含有の65%エタノール ハイポ2%AL綿球
ハイポ2%AL綿棒
ポビドンヨード イオダイン10%綿球*
ポビドン綿球PV、など
イオダイン10%綿棒*
アプリスワブ*
ポピヨドン10%綿棒
ポビスティック
スワブスティック
プッシュ綿棒P、など
0.025%塩化ベンザルコニウム ザルコニン0.025%綿球*
ザルコニン0.025%綿棒*

0.05%クロルヘキシジン ステリクロン0.05%綿球*
ステリクロン0.05%綿棒*

0.12%クロルヘキシジン ケンエーママラック*
0.2%クロルヘキシジン ヘキジジン*

* 無菌製剤

8.カテーテル刺入部位、血液培養時での注射部位

カテーテル刺入部位や血液培養時での注射部位の消毒には、人体に適用可能で、かつできる限り効力の強い消毒薬を選択すべきである。0.5~1%クロルヘキシジンアルコール(ステリクロン®0.5%AL綿球など)や63%エタノール含有ポビドンヨード(イソジン®フィールドなど)の使用が勧められる。また、アルコールにアレルギーを示す場合には、0.05~0.5%クロルヘキシジン(ステリクロン®W液0.5など)が適している。

9.生体消毒での留意点

表3に、生体に対する消毒薬の選択例を示した(ただし、創傷部位の消毒薬については表1参照)。消毒薬の生体適用での留意点を次にあげる。

表3. 生体に対する消毒薬の選択

対象 消毒薬 備考
手術野
(皮膚)
ポビドンヨード*1
63%エタノール含有ポビドンヨード*2
0.5%クロルヘキシジンアルコール*3
首から上の皮膚消毒に、63%エタノール含有ポビドンヨードや0.5%クロルヘキシジンアルコールを用いてはならない。誤って眼や耳に混入した場合、毒性を示すからである。首から上の皮膚消毒にはポビドンヨードを用いる
手術野
(粘膜)
ポビドンヨード
0.01~0.025%塩化ベンザルコニウム*4
0.01~0.025%塩化ベンゼトニウム*5
 
腟・外陰部 0.02~0.05%塩化ベンザルコニウム
0.025%塩化ベンゼトニウム
産婦人科用イソジン®クリーム
 
口腔
(うがい)
15~30倍希釈のポビドンヨードガーグル*6
10倍希釈のオキシドール*7
0.004%塩化ベンゼトニウム*8
 
口腔
(損傷)
15~30倍希釈のポビドンヨードガーグル
ポビドンヨード
原液~2倍希釈のオキシドール
0.01~0.025%塩化ベンゼトニウム
 
結膜嚢 0.02%クロルヘキシジン*9 適用30秒~1分後に滅菌水などで洗い流す
注射部位 アルコール*10
ポビドンヨード
アルコールおよびポビドンヨードいずれにも過敏症を示す患者には、0.05~0.5%クロルヘキシジン(ステリクロン®0.05%綿球など)等を用いる
カテーテル
刺入部位
0.5~1%クロルヘキシジンアルコール*11
63%エタノール含有ポビドンヨード
ポビドンヨード
アルコールおよびポビドンヨードいずれにも過敏症を示す患者には、 0.5%クロルヘキシジン(0.5%ステリクロン®など)を用いる
採血部位
(血液培養)
0.5~1%クロルヘキシジンアルコール
63%エタノール含有ポビドンヨード
希ヨードチンキとアルコールとの併用
希ヨードチンキを用いる場合には、副作用防止のため、適用30秒後にアルコールで拭き取る
  • *1: ポビドンヨード...イオダインM、イソジン、ネグミンなど
  • *2: 63%エタノール含有ポビドンヨード...イソジンフィールド、ポピヨドンフィールド
  • *3: 0.5%クロルヘキシジンアルコール...ステリクロンエタノール、ヘキザックアルコール、マスキンエタノール、ベンクロジドエタノールなど
  • *4: 0.025%塩化ベンザルコニウム...ザルコニン、オスバン液、ヂアミトール水、ヤクゾール水、プリビーシー®液、逆性石けん「ヨシダ」など
  • *5: 0.025%塩化ベンゼトニウム...ベゼトン、エンゼトニン
  • *6: ポビドンヨードガーグル...イオダインガーグル、イソジンガーグル、ネオヨジンガーグル、ポピヨドンガーグルなど
  • *7: オキシドール...オキシフル、マルオキシールなど
  • *8: 0.004%塩化ベンゼトニウム...ネオステリングリーン
  • *9: 0.02%クロルヘキシジン...ステリクロン、マスキン、ヘキザック水、グルコジンW水など
  • *10: アルコール...消毒用エタノール、70%イソプロパノール
  • *11: 1%クロルヘキシジンアルコール...ヘキザックAL1%、クロルヘキシジングルコン酸塩エタノール消毒液1%「東豊」

(1)適正濃度での使用を!

クロルヘキシジンの0.05%液は創部消毒に有用であるが、誤って1桁高い0.5%液を用いるとショックが生じる可能性がある(図1)31,32)。また、クロルヘキシジンの0.02%液は結膜嚢の消毒に用いられるが、誤って0.2%液を用いると重篤な眼障害が生じる33,34)

このような消毒薬の濃度の誤りは、希釈調製時に生じることが多い。したがって、濃度の誤りを防止するため、クロルヘキシジンや塩化ベンザルコニウムなどの生体適用では、希釈・滅菌済み製品の使用が勧められる(図2)。

図1. クロルヘキシジンの0.05%は創部消毒に有用であるが、誤って1桁高い0.5%液を用いるとショックが生じる。
図2. 希釈・滅菌済み製品

濃度誤りの防止に有用である。

(2)体腔内へは禁忌

ポビドンヨード(イオダインM消毒液10%など)を腹腔の洗浄に用いて、頻脈性不整脈や致死的なアレルギー性漿膜炎が生じた例がある35)。また、クロルヘキシジン(ステリクロン®など)を関節腔に用いて、軟骨溶解が生じた例がある36)。したがって、胸腔内、腹腔内、膀胱内および関節腔内などへの消毒薬の適用は差し控える必要がある。

(3)アルコールの引火性に注意!

0.5%クロルヘキシジンアルコール(ステリクロン®B・R・Wエタノール液0.5など)や63%エタノール含有ポビドンヨード(イソジン®フィールドなど)での術野消毒後に電気メスを使用したところ、患者が熱傷を負った例がある。皮膚と手術台の間に溜まっていた本薬に電気メスの火花が引火したためであった37,38)

アルコール含有製剤は優れた抗菌力を示すものの、引火性に対する注意が必要である。患者付近から青白い炎が上がる事故はまれではない。したがって、手術野へのアルコール製剤の使用に際しては、皮膚と手術台の間に溜まるほどの大量使用は避けるとともに、アルコールの乾燥を確認してから電気メスなどを使用する必要がある。

(4)湿潤状態のポビドンヨードを長時間にわたって皮膚に接触させない

術野消毒の際に、ポビドンヨード(イオダインM消毒液10%など)を患者と手術台に溜まるほど大量に用いてはならない。なぜなら、湿潤状態の本薬が皮膚へ長時間にわたって接触すると、化学損傷(熱傷)を生じるからである39,40)

山口大学病院手術部では、患者と手術台の間に吸水シーツ(紙オムツ)を敷いて、本薬が患者と手術台の間に溜まるのを防いでいる。

(5)ポビドンヨード消毒では急いで乾かさない!

表4に、MRSAに対するポビドンヨード(イオダインM消毒液10%など)および消毒用エタノールの効果を示した。本表から、MRSAの殺滅にポビドンヨードでは2分間の接触が、消毒用エタノールでは15秒間の接触が必要になることが分かる。すなわち、ポビドンヨードは消毒用エタノールに比べて、速効性に欠ける41,42)

したがって、ポビドンヨード消毒では、十分な殺菌効果を得るため、塗布後にしばらくそのままにしておく必要がある。塗布後に2分間以上(自然乾燥するまで)待てば、ポビドンヨードの十分な殺菌効果が期待できる。早く乾かしたいからといって、あおいだりガーゼで拭き取ったりすることは望ましくない。

表4. MRSAに対する消毒薬の効果*1

消毒薬 菌株*2 接触後の生菌数/mL
15秒 30秒 1分 2分 5分
ポビドンヨード A 5.7×103 4.0×102 5 0 0
B 1.4×105 1.0×104 1.3×102 0 0
消毒用エタノール A 0 0 0 0 0
B 0 0 0 0 0
  • *1 サスペンジョン法で行った。初発菌量は菌株Aで1.3×106生菌数/mL、菌株Bで2.1×106生菌数/mLであった(2回くり返しの平均値)。
  • *2 臨床分離株

(6)微生物汚染に注意!

塩化ベンザルコニウム(ザルコニン®など)、クロルヘキシジン(ステリクロン®など)および両性界面活性剤(サテニジン®など)等の低水準消毒薬では、使用中の微生物汚染に対する注意が必要である。典型的な汚染パターンは、これらの低水準消毒薬を含浸した綿球やガーゼを長期間にわたって分割・つぎ足し使用をした場合である(図3)43-46)。したがって、低水準消毒薬含浸の綿球やガーゼは、調製後24時間以内に廃棄するか、滅菌済みの個包装製品(ザルコニン®0.025%綿球14・20、ステリクロン®0.05%綿球Pなど)を用いるのが望ましい(表2)。

なお、ポビドンヨードやアルコールを含浸した綿球やガーゼが、使用中に微生物汚染を受ける可能性はない(ドロなどの混入による芽胞汚染を除く)。

図3. 低水準消毒薬の含浸綿球は細菌汚染を受けやすいので、滅菌済みの単包製品の使用が勧められる。

引用文献

  1. Maklebust J: Treating pressure ulcers in the home. Home Healthc. Nurse. 1999; 17, 307-315.
  2. Cooper ML, et al: The cytotoxic effects of commonly used topical antimicrobial agents on human fibroblasts and keratinocytes. J Trauma. 1991; 31, 775-782.
  3. Teepe RG, et al: Cytotoxic effects of topical antimicrobial and antiseptic agents on human keratinocytes in vitro. J Trauma. 1993; 35, 8-19.
  4. Foege WH, et al(ed): Guideline for prevention of surgical wound infections, p6, 1981, US Department of Health and Human services, Atlanta.
  5. Larson E: Guideline for use of topical antimicrobial agents. Am J Infect Control. 1988; 16, 253-266.
  6. Bicknell PG: Sensorineural deafness following myringoplasty operations. J Laryngol Otol. 1971; 85, 957-961.
  7. Rodeheaver G, et al: Bactericidal activity and toxicity of iodine-containing solutions in wounds. Arch Surg. 1982; 117, 181-186.
  8. American Medical Association: Drug Evaluations. 6th ed. P1526, 1986, WB Saunders, Philadelphia.
  9. Vorherr H, et al: Vaginal absorption of povidone-iodine. JAMA. 1980; 244, 2628-2629.
  10. Hoang T, et al: Povidone-iodine as a periodontal pocket disinfectant. J Periodontal Res. 2003; 38, 311-317.
  11. Rees TD, et al: Oral ulcerations with use of hydrogen peroxide. J Periodontol. 1986; 57, 689-692.
  12. Ferguson MM, et al: The effect of a povidone-iodine mouthwash upon thyroid function and plaque accumulation. Br Dent J. 1978; 144, 14-16.
  13. 澤 充, 宮倉幹夫, 水流忠彦, 眼科手術前消毒法について.眼科臨床医報, 1987; 81, 1650-1652.
  14. 吉野史郎: I−2.消毒法.眼科. 1987; 29, 949-952.
  15. 山口達夫,ほか: 眼の消毒にヨード製剤は危険か? 〜東京都眼科医会勤務部が実施したアンケート調査の結果〜.眼科. 2003; 45, 937-946.
  16. CiullaT A, et al: Bacterialendophthalmitis prophylaxis for cataractsurgery. Ophthalmology. 2002; 109, 13-26.
  17. Manners TD, et al: Anterior chamber aspirate cultures insmall incision cataract surgery. Br J Ophthalmol. 1995; 79, 878-880.
  18. Vanrij G, et al: Toxic keratopathy due to the accidental use of chlorhexidine cetrimide and cialit. Doc Ophthlmol. 1995; 90, 7-14.
  19. Mac Rae SM, et al: Thecorneal toxicity of presurgical skin antiseptics. Am J Ophthalmol. 1984; 97, 221-232.
  20. Phinney RB, et al, Corneal edema relatedto accidental Hibiclens exposure Am J Ophthalmol. 1988; 106, 210-215.
  21. Crompton DO: Dangerous Betadine dispensing. Med J Aust. 1980; 2, 226.
  22. Garland JS, et al: Comparison of 10% povidone-iodine and 0.5% chlorhexidine gluconate for the prevention of peripheral intravenous catheter colonization in neonates: a prospective trial. Pediatr Infect Dis J. 1995; 14, 510-516.
  23. Humar A, et al: Prospective randomized trial of 10% povidone-iodine versus 0.5% tincture of chlorhexidine as cutaneous antisepsis for prevention of central venous catheter infection. Clin Infect Dis. 2000; 31, 1001-1007.
  24. Traoré O, et al: Comparison of in-vivo antibacterial activity of two skin disinfection procedures for insertion of peripheral catheters: povidone iodine versus chlorhexidine. J Hosp Infect. 2000; 44, 147-150.
  25. Maki DG, et al: Prospective randomised trial of povidone-iodine, alcohol, and chlorhexidine for prevention of infection associated with central venous and arterial catheters. Lancet. 1991; 338, 339-343.
  26. Mimoz O, et al: Prospective, randomized trial of two antiseptic solutions for prevention of central venous or arterial catheter colonization and infection in intensive care unit patients. Crit Care Med. 1996; 24, 1818-1823.
  27. Clemence MA, et al: Central venous catheter practices: results of a survey. Am J Infect Control. 1995; 23, 5-12.
  28. Elliott TS, et al: Guidelines for good practice in central venous catheterization. Hospital Infection Society and the Research Unit of the Royal College of Physicians. J Hosp Infect. 1994; 28, 163-176.
  29. 水口 潤, シャント感染こうすれば防げる! 透析ケア, 8: 22-26, 2002
  30. 田中恵梨子, ほか: 穿刺部位の消毒方法(2)聖隷三方原病院の方法. 透析ケア.2006; 12, 230-231.
  31. OkanoM, et al: Anaphylactic symptoms due to chlorhexidine gluconate. Arch Dermatol. 1989; 125, 50-52.
  32. Ohtoshi T, et al: IgE antibody-mediated shock reaction caused by topical application of chlorhexidine. Clin Allergy. 1986; 16, 155-161.
  33. van Rij G, et al: Toxic keratopathy due to the accidental use of chlorhexidine, cetrimide and cialit. Doc Ophthalmol. 1995; 90, 7-14.
  34. Varley GA, et al: Hibiclens keratopathy. A clinicopathologic case report. Cornea. 1990; 9, 341-346.
  35. Joshi P: A complication of povidone-iodine. Anaesthesia. 1989; 44, 692.
  36. van Huyssteen AL, et al: Chlorhexidine and chondrolysis in the knee. J Bone Joint Surg Br. 1999; 81, 995-996.
  37. 木村 哲, ほか: 電気メスの火花がアルコール含有消毒液およびスポンジ枕に引火し熱傷を生じた症例. 手術医学. 1995; 16, 222-223.
  38. Willis J, et al, Burns with Hibitane tincture. FDA Drug Bull. 1985; 15, 9.
  39. 中野園子, ほか: ポビドンヨードによる化学熱傷. 麻酔. 1991; 40, 812-815.
  40. 大橋光江, ほか: 手術部における背部紅斑に関する研究. オペナーシング. 1998; 13, 618-624.
  41. Haley CE, et al: Bactericidal activity of antiseptics against methicillin-resistant Staphylococcus aureus. J Clin Microbiol. 1985; 21, 991-992.
  42. Laufman H: Current use of skin and wound cleansers and antiseptics. Am J Surg. 1989; 157, 359-365.
  43. Oie S, et al: Microbial contamination of antiseptic-soaked cotton balls. Biol Pharm Bull. 1997; 20, 667-669.
  44. Oie S, et al: Microbial contamination of antiseptics and disinfectants. Am J Infect Control. 1996; 24, 389-395.
  45. Oie S, et al: Microbial contamination of a disinfectant-soaked unwoven cleaning cloth. J Hosp Infect. 2012; 82, 61-63.
  46. Nakashima AK, et al: Epidemic septic arthritis caused by Serratia marcescens and associated with a benzalkonium chloride antiseptic. J Clin Microbiol. 1987; 25, 1014-1018.