各種微生物に対する消毒薬の選び方

各種微生物に対する消毒薬の選び方 項目一覧

腸管出血性大腸菌

腸管出血性大腸菌(E. coli O157,E. coli 026,E. coli O111,E. coli O165など;以下O-157と略す)では、10~100個などの小菌量で感染が成立する1)。したがって、O-157感染患者には、十分な院内感染対策が必要になる2,3)

(1)感染経路

O-157は温血動物の腸内に存在する(図1)。とくに、ウシの腸内にはアメリカ産で約20%に、国内産で約5%に存在する。したがって、社会一般での本菌による感染は、おもに牛に由来する4-6)。一方、病院内での本菌による感染は、ヒト(感染患者)からヒトへの「糞便-経口」である(図2)。

図1. 腸管出血性大腸菌の感染経路

図1. 腸管出血性大腸菌の感染経路

図2. 病院内での腸管出血性大腸菌のおもな感染経路

図2. 病院内での腸管出血性大腸菌のおもな感染経路

「糞便→経口」である

(2)有効な消毒法

O-157に対してはすべての消毒薬が有効である。また,70℃・1分間や80℃・5秒間などの熱水が有効である(図3)7-9)

図3. 腸管出血性大腸菌に対する熱水の消毒効果

図3. 腸管出血性大腸菌に対する熱水の消毒効果

環境

糞便が付着している可能性がある箇所が消毒対象である。トイレ(洋式トイレの便座、フラッシュバルブ、ドアノブ)などの消毒を、消毒用エタノールや0.2%塩化ベンザルコニウム(オスバン®、ザルコニン®など)などで清拭を行う(図4)。

図4. 腸管出血性大腸菌の消毒
図4. 腸管出血性大腸菌の消毒01 図4. 腸管出血性大腸菌の消毒02

トイレがおもな消毒対象である。

手指

速乾性手指消毒薬が有効である。ゲル剤および液剤のいずれを用いてもよい。また、0.1%塩化ベンザルコニウム液なども有効である。

用具やリネンの消毒

差し込み式便器やポータブルトイレのバケツの消毒には、熱がもっとも適している。90℃・1分間などの条件で、フラッシャーディスインフェクタを用いた蒸気消毒を行う(図5)。また、ポータブルトイレ用の汚物処理バッグ(使い捨てトイレ;図6)なども有用である。

一方、下着などのリネン消毒には、熱水が適している(図7)。70℃・10分間などの熱水消毒を行う。また、70℃の熱水への1分間以上の浸漬などでも差し支えない。

熱水洗濯機がない場合には、0.1%塩化ベンザルコニウムや0.1%塩化ベンゼトニウム(ハイアミン®、エンゼトニン®など)への30分間浸漬や0.1%(1,000ppm)次亜塩素酸ナトリウムへの30分間浸漬などを行う。

図5. フラッシャーディスインフェクタによるポータブルトイレなどの消毒
図5. フラッシャーディスインフェクタによるポータブルトイレなどの消毒01 図5. フラッシャーディスインフェクタによるポータブルトイレなどの消毒02
図6. ポータブルトイレに装着した汚物処理バッグ(使い捨てトイレ)
図6. ポータブルトイレに装着した汚物処理バッグ(使い捨てトイレ)
図7. 熱水洗濯機
図7. 熱水洗濯機

腸管出血性大腸菌で汚染された下着などの消毒に有用である。

引用文献

  1. Rao GG, et al: Laboratory acquired verotoxin producing Escherichia coli (VTEC) infection. J Hosp Infect, 33: 228-230, 1996
  2. Karmali MA, et al: Hospital-acquiredEscherichia coliO157:H7 associated haemolytic uraemic syndrome in a nurse. Lancet, i: 526, 1988
  3. Carter AO, et al: A severe outbreak ofEscherichia coliO157:H7-associated hemorrhagic colitis in a nursing home. N Engl J Med, 317: 1496-1500, 1987
  4. Cryan B: EnterohaemorrhagicEscherichia coli. Scand J Infect Dis, 22: 1-4, 1990
  5. Karch H, et al: Infektionen durch entrohamorrhagischeEscherichia coli(EHEC): ein klinisches und mikrobiologisches problem und eine herausforderung fur den offentlichen gesundheitsdienst. Immun Infekt, 17: 203-211, 2000
  6. Karmali MA: Infection by verocytotoxin-producingEscherichia coli. Clin Microbiol Rev, 2: 15-38, 1989
  7. Oie S, et al: Efficacy of disinfectants and heat againstEscherichia coliO157:H7. Microbios, 98: 7-14, 1999
  8. Ahmed NM, et al: Heat-resistance ofEscherichia coliO157:H7 in meat and poultry as affected by product composition. J Food Sci, 60: 606-610, 1995
  9. Juneja VK, Set al: Thermal destructionofEscherichia coliO157:H7 in beef and chicken: determination of D-and z-values. Int J Food Microbiol, 35: 231-237, 1997