消毒薬の調製上の留意点

1. 希釈に用いる水

水道水で希釈可能な消毒薬は、グルタラール(ステリゾールなど)、フタラール(ディスオーパ)、過酢酸(アセサイドなど)および次亜塩素酸ナトリウム(ピュリファンPなど)である。これらの消毒薬は抗菌スペクトルが広く、かつ殺菌力が強いので、少量の微生物(数個/mL)が含まれる水道水で希釈しても問題はなない1)

一方、希釈して用いるポビドンヨード(イオダインMなど)は、粘膜や損傷皮膚への適用では滅菌精製水で希釈する。その他への適用では、水道水で希釈しても差し支えない。

また、クロルヘキシジン(ステリクロンなど)や塩化ベンザルコニウム(ザルコニンなど)を粘膜や損傷皮膚に用いる場合には、滅菌精製水で希釈するか、または精製水で希釈後に高圧蒸気滅菌を行う2)。ただし、希釈間違い防止の観点から、できる限り希釈・滅菌済み製品の使用が勧められる。なお、これらの消毒薬を手指や器具の消毒に用いる場合には、水道水で希釈する。この際には、水道水に少量含まれるセパシア菌(Burkholderia cepacia)などの細菌の高濃度増殖を防ぐため3-5)、希釈後24時間以内に廃棄する必要がある。希釈後24時間以上にわたって使用するのであれば、微生物汚染防止の目的で、1/10量のアルコールを添加しておくとよい6)

両性界面活性剤(サテニジンなど)の希釈に用いる水は、クロルヘキシジンや塩化ベンザルコニウムの場合と同様である。

2. 希釈後の安定性(未使用の場合)

(1)グルタラール

緩衝化剤を添加後のグルタラール(ステリゾールなど)は、経時的に分解する。たとえば、蓋付き容器中の保管で、2%グルタラールの力価は14日後におおよそ50%となる7)

(2)過酢酸

Ⅰ液とⅡ液を混合後の過酢酸(アセサイドなど)は経時的に分解する。たとえば、混合後9日間で約70%の力価となる。

(3)次亜塩素酸ナトリウム

希釈後の次亜塩素酸ナトリウム(ピュリファンPなど)は、遮光下での蓋付き容器中で1カ月間程度は安定である8,9)。ただし、本剤は有機物の混入で急速に力価低下が生じる。

(4)ポビドンヨード

希釈したポビドンヨード(イオダインMなど)は、密封・遮光保存では比較的安定で、1カ月間まで使用できる。しかし、洗面器などの開放容器中では不安定で、8~12時間で約半分の力価となる10)

(5)クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、両性界面活性剤

希釈後のクロルヘキシジン(ステリクロンなど)、塩化ベンザルコニウム(ザルコニンなど)、両性界面活性剤(サテニジンなど)は安定である11,12)。希釈後に高圧蒸気滅菌しておけば、 密封・遮光保存で6カ月間は安定である。

3. 微生物汚染

表1には、高水準、中水準および低水準消毒薬の使用中の微生物汚染の有無について示した。

また、表2には、低水準消毒薬の典型的な細菌汚染パターンとその防止法を示した13-24)

なお、自己導尿用カテーテルキット内への0.025%塩化ベンザルコニウム・グリセリン(グリセリンBC液60%「ケンエー」)の入れ替えは、微生物汚染防止の観点から、24時間ごとに行うのが望ましい25)

表1. 使用中の消毒薬の微生物汚染の有無

分類 消毒薬 微生物汚染 備考
高水準 グルタラール
ステリゾールなど
 
フタラール
ディスオーパ
過酢酸
アセサイドなど
中水準 次亜塩素酸ナトリウム
ピュリファンPなど
 
ポビドンヨード
イオダインMなど
  • ドロなどの混入による芽胞汚染はある
  • 製品自体のBurkholderia cepacia汚染が報告されている
アルコール
消毒用エタノールIPなど
  • ドロなどの混入による芽胞汚染はある
低水準 塩化ベンザルコニウム
ザルコニンなど
 
塩化ベンゼトニウム
ベゼトンなど
クロルヘキシジン
ステリクロンなど
両性界面活性剤
サテニジンなど
アクリノール
  • 製品自体の汚染もある

表2. 低水準消毒薬の微生物汚染パターンとその防止法

使用法 汚染パターン 防止法

綿球やガーゼに含浸させて使用
長期間にわたる分割使用やつぎ足し使用
  • 調製後は24時間以内に廃棄する。
  • 滅菌済みの個包装製品(ザルコニン0.025%綿球、ステリクロン0.05%綿球など)を用いる。

気管内吸引チューブの浸漬に使用
24時間にわたるくり返し使用
  • 8%エタノール添加の0.1%塩化ベンザルコニウム(ザルコニンA0.1など)を用いる。

局所洗浄装置(イルリガートル)で使用
長期間にわたるつぎ足し使用
  • 7~14日ごとにアルコールフラッシュして、その後に乾燥させる。
  • 代替法として、滅菌生理食塩液(100ml入りなど)と局所洗浄ノズル(使い捨て)で対応する。

バケツで使用
長期間にわたるつぎ足し使用
  • 定期的( 7日間ごとなど)に洗浄して、乾燥させる

ノズル式容器で使用
長期間にわたるつぎ足し使用
  • つぎ足し使用は行わない

4. 使用開始後の使用期限

使用開始後の消毒薬の使用期限は、製品容器に記載されている年月までである。

一方、希釈または緩衝化して使用開始した消毒薬の使用期限は、使用方法、有機物汚染を受ける程度、気温、および日光照射の有無などの条件に左右される。表3には、使用開始後の消毒薬のおおよその使用期限と、その使用期限を左右する主な因子を示した。本表に関しての留意点は次のとおりである。

次亜塩素酸ナトリウム(ピュリファンPなど)では、目に見える有機物の混入が生じた場合はただちに作り換える必要がある8)

希釈・滅菌済みのクロルヘキシジン(ステリクロンなど)や塩化ベンザルコニウム(ザルコニンなど)では、分割使用による微生物汚染は生じにくいので、開封後3カ月や6カ月にわたって分割使用できる14)。 ただし、容器注ぎ口やキャップの内側に手指などが触れた場合には、その時点での廃棄としたい。

表3. 消毒薬の使用開始後の使用期限

消毒薬 使用法 使用期間 使用期限を左右する因子
グルタラール*1
ステリゾールなど
内視鏡自動洗浄機 2~2.25%製品:20回もしくは7~10日間
3%製品:40回もしくは21~28日間
3.5%製品:50回もしくは28日間
  • 水による希釈
  • 経時的な分解
浸漬容器 2~2.25%製品:7~10日間
3%製品:21~28日間
3.5%製品:28日間
フタラール*2
ディスオーパ
内視鏡自動洗浄機 30~40回
  • 水による希釈
過酢酸*1,*3
アセサイドなど
内視鏡自動洗浄機 25~30回もしくは7~9日間
  • 経時的な分解
  • 水による希釈
浸漬容器 7~9日間
次亜塩素酸ナトリウム
ピュリファンPなど
浸漬容器 1~7日間
  • 有機物の混入による不活性化
  • 直射日光による不活性化
ポビドンヨード
イオダインMなど
ベースン法
(洗面器など)
8時間
  • 経時的な力価低下
  • 有機物の混入による不活性化
消毒用エタノール 万能つぼ 7日間
  • 揮発による力価低下
クロルヘキシジン
ステリクロンなど
塩化ベンザルコニウム
ザルコニンなど
希釈・滅菌済み製剤の分割使用 3カ月間や6カ月間
  • 微生物汚染
ベースン法
(洗面器など)
8~24時間
  • 微生物汚染
  • 手指への吸着による力価低下
  • 有機物の混入による不活性化
  • *1 グルタラールや過酢酸では、緩衝化剤を添加後の使用期限。
  • *2 リンスが行いにくいという観点から、用手法(浸漬容器)での使用は勧められない。
  • *3 金属腐食性が強いという観点から、浸漬時間は10分以内を厳守する。

5. 消毒薬綿球の使用期限

クロルヘキシジンや塩化ベンザルコニウムなどの低水準消毒薬を含浸した綿球(ガ―ゼ)は、細菌汚染を受けやすい13-16)。したがって、これらの低水準消毒薬の含浸綿球の調製後の使用期限は、24時間とする(表4)。

なお、低水準消毒薬の含浸綿球は細菌汚染を受ける可能性があるので、けっしてアンプルやバイアルの消毒に用いてはならない21,22,26) 。アルコール含浸綿球を用いる。アルコールは殺菌力が強く、かつ速乾性で、細菌汚染を受ける可能性がないからである(泥などの混入による芽胞汚染を除く)。

表4. 消毒薬の含浸綿球の使用期限(室温保管)

消毒薬 使用期限
ポビドンヨード
アルコール*1
7~14日間
クロルヘキシジン
塩化ベンザルコニウム
塩化ベンゼトニウム
両性界面活性剤
アクリノール
24時間
  • *1 密封容器内では、より長期間使用できる。

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