ノロウイルスの症状とは?かかったときの水分補給や食事の仕方、予防方法を紹介
2025.12.12| 感染症・消毒

毎年のように耳にする「ノロウイルス」は、突然の嘔吐や下痢を引き起こす感染性胃腸炎の原因となるウイルスです。感染力が非常に強く、家庭や職場、学校などでも広がりやすいのが特徴です。
「もし感染したらどうすれば良いのか」「食事や水分補給はどのようにしたら良いのか」と不安に思う方も多いのではないでしょうか。
今回は、ノロウイルスの主な症状を始め、かかったときの水分補給や食事の仕方や日常生活でできる予防方法まで詳しく紹介します。感染を防ぐために、適切な知識を身につけておきましょう。
ノロウイルスとは
ノロウイルスは、主に冬に流行する感染性胃腸炎の原因となるウイルスです。感染力が非常に強く、人から人へと広がりやすいのが特徴です。感染者の便や嘔吐物に含まれるウイルスが、手や食品を介して口に入ることで発症します。
加熱が不十分な二枚貝(カキやアサリなど)を食べた際に感染することもありますが、これは二枚貝が海水中のウイルスを体内に溜め込みやすいためです。
ただし、実際の感染では、調理や配膳の際に感染者の手からウイルスが食品に付着するケースが多く、生ものだけでなく加熱済みの食品でも二次汚染による感染が起こることがあります。
症状が治まった後も数日から1週間ほどは便からウイルスが排出されるため、回復後も注意が必要です。
なお、ノロウイルスの感染経路については、以下のコラムもあわせてご覧ください。
ノロウイルスの主な症状
ノロウイルスに感染すると、1〜2日の潜伏期間の後に症状が現れます。主な症状は以下のとおりです。
- 吐き気
- 嘔吐
- 下痢
- 腹痛
- 発熱(微熱程度)
これらの症状は通常1〜2日でおさまることが多いですが、脱水症状に注意が必要です。とくに、小さな子どもや高齢者は体力を奪われやすく、重症化することもあります。水分補給をこまめに行い、脱水を防ぐようにしましょう。
なお、これらの症状が出た場合はすぐに医療機関を受診し、無理をせず安静に過ごすことが大切です。
ノロウイルスにかかったときの、飲み物・食べ物の適切な摂り方
ノロウイルスによる感染性胃腸炎の症状があるときは、胃腸への負担が少ない飲み物・食べ物を摂取するのが良いと考えられています。
具体的にどのようなものが良いのか、それぞれ解説します。
ノロウイルスにかかったときの水分補給のポイント
突然の嘔吐から始まることが多いノロウイルスによる感染性胃腸炎は、発症から3~6時間程度の間、激しい嘔吐が繰り返されます。その後、下痢の症状が現れるケースが多いです。
嘔吐や下痢が繰り返されると、脱水症状を心配して、一度に大量の水分を補給しようとすることがあります。しかし、急激な摂取は胃が刺激されてかえって吐き気をもよおし、すぐに吐き出してしまうことも少なくありません。嘔吐の症状が激しい場合は、無理に水分補給をせず落ち着くまで待ちましょう。
吐き気が治まってきたら、少しずつ水分補給を始めます。まず少量を飲み、吐き気をもよおさないか様子をみて、また少量飲むといったように、ゆっくり水分補給していきます。
飲み物が冷たいと胃に負担を与えてしまうため、冷蔵庫から取り出したままを飲むのではなく、常温に戻してから飲むと良いでしょう。
適切な飲み物
常温水や麦茶などでも良いですが、症状が激しい場合は、水分と電解質を同時に補給できるスポーツドリンクや経口補水液が推奨されています。
嘔吐や下痢によって排出される体液には、体内の塩分やカリウムといった電解質も多く含まれているため、水分だけでなく電解質の補給も必要です。風邪や発熱の際の水分補給にも利用できるので、家に1~2本常備しておくと良いでしょう。
避けたい飲み物
水分補給をする際には、コーヒーや紅茶、緑茶など、カフェインが含まれた飲料は避けましょう。カフェインには利尿作用があり、体内の水分を排出するのを促すおそれがあるため、脱水症状を進行させてしまう可能性があります。
オレンジジュースやグレープフルーツジュースなど、酸味のある飲み物は吐き気をもよおしてしまうため、控えたほうが無難です。同様に、炭酸飲料も炭酸が胃を刺激するため避けましょう。
牛乳や乳性飲料も、消化する際に胃腸に負担を与えるため胃腸炎のときは不向きの飲み物といえるでしょう。体調を崩しているので、当然アルコールもNGです。
ノロウイルスにかかったときの食事のポイント
ノロウイルスによる感染性胃腸炎を発症すると、胃腸が弱まり、あまり食欲が感じられなくなり、嘔吐や下痢を繰り返すことで体内の水分が失われやすくなります。
まずは、水分補給を優先し、体調が落ち着いてきたら、徐々に食事を摂るようにしましょう。ノロウイルスにかかったときの食事で最も大切なのは、胃腸に負担を与えないことです。消化の良い食事を、少量ずつ頻回に分けてゆっくり食べるようにしましょう。
発症から1~2日は、感染性胃腸炎の症状が強く現れるため、無理に食事を摂る必要はありません。3~4日経って症状が落ち着き、食欲がわいてきたら少しずつ食事を再開しましょう。
適切な食べ物
発症から1~2日は、しっかり水分補給ができていれば、無理に食事を摂る必要はありません。
食欲があれば、おかゆ、やわらかく煮込んだうどん、すり野菜のスープなど、消化しやすい食べ物を、あっさりとした味つけで食べましょう。すりおろしたリンゴも、口当たりが良く食べやすいです。
発症から3~4日経ったら食欲もわいてくるので、やや食べ応えのある食事にしてみましょう。主食は、卵や魚、野菜を入れた具だくさんの雑炊など、やわらかく消化しやすいものを選びましょう。
副菜には、野菜の煮物や卵焼きといった、料理を添えるのがおすすめです。食べた後の体調をみながら、徐々に通常食に戻しましょう。
避けたい食べ物
ノロウイルスで胃腸が弱っているときは、食物繊維が多い根菜類やキノコ類、脂肪分の多い肉類などは避けるのが望ましいです。薄味を心がけ、胃腸に刺激を与える香辛料の使用は控えましょう。
果物が食べたい場合は、吐き気を誘発することのある酸味の強いものは避けましょう。ヨーグルトなどの乳製品も、消化の際に胃腸に負担を与えるおそれがあります。症状が落ち着くまでは控えておいたほうが良いでしょう。
ノロウイルスにかかったときの治療法

現段階ではノロウイルスに対する抗ウイルス剤は存在していません。感染性胃腸炎そのものを治す薬や治療法もないため、医療機関を受診しても、整腸剤などによる対症療法が中心です。最終的には、自宅で安静に過ごし、自然治癒するのを待つことが基本となります。
下痢止めの薬はありますが、薬を使って無理に下痢を止めると、ウイルスを排出できなくなり、かえって症状が長引いてしまうと考えられています。そのため、感染性胃腸炎の治療では、下痢止めを使わないのが一般的です。
吐き気止めの薬は、吐き気が強く、水分や食事を摂るのが難しい場合に処方されます。自己判断で市販薬を使うのではなく、医師に適切な処方をしてもらいましょう。
なお、嘔吐や下痢の症状がひどく、脱水症状が進行している場合は、点滴の処置を受けることもあります。おしっこの量が少ない、体がだるい、頭痛やめまいなどの症状がある場合は、脱水症状が進んでいる可能性があるため、速やかに医療機関を受診しましょう。
ノロウイルスの予防法
ノロウイルスは、ほんのわずかな量でも感染してしまうほど強いウイルスです。しかし、日常生活の中で基本的な予防法を実践すれば、感染リスクを少しでも下げられるでしょう。
日常生活の中で意識したい主な予防法は以下の3つです。
- 酸性アルコールで手指を消毒する
- 食材は中心部までしっかり加熱する
- 家庭内での二次感染を防ぐ
それぞれのポイントを詳しく解説します。
酸性アルコールで手指を消毒する
ノロウイルスは、一般的なアルコール消毒薬では効きにくい「ノンエンベロープウイルス」に分類されています。
一方で、アルコールのpHを酸性に調整した「酸性アルコール」は、ノンエンベロープウイルスに高い消毒効果を示すことが報告されています。
外出先や帰宅時に、酸性アルコールを手指全体にすり込み、指先や手の甲、指の間などの細かい部分までしっかり行き渡らせて消毒することが大切です。
なお、手に汚れがある場合や、食事前、トイレの後は、石けんと流水による手洗いが基本です。その上で、酸性アルコールを補助的に使うことで、より衛生的な状態を維持できます。
健栄製薬のオンラインショップでも、酸性アルコールの製品を取り扱っているので、購入を検討してみてください。
食材は中心部までしっかり加熱する
ノロウイルスは熱に弱く、85〜90℃で90秒以上加熱することで不活性化できるとされています。ウイルスを溜め込みやすい二枚貝はもちろん、肉や魚などもしっかり火を通しましょう。
また、まな板や包丁などの調理器具は、使用後に洗剤で汚れを落としてから、熱湯または塩素系消毒薬を使って消毒してください。生の食材と加熱済みの料理では器具を分けて使用し、二次汚染を防ぐ工夫も大切です。
家庭内での二次感染を防ぐ
感染者の吐物や便には大量のウイルスが含まれています。処理の際はマスクと手袋を着用し、使い捨てできるペーパータオルなどで拭き取ることが基本です。拭き取った後は、塩素系消毒薬でしっかり消毒し、汚染物は密閉して廃棄しましょう。
タオルや食器の共用は避け、こまめな換気と清掃を心がけることも重要です。調理を担当する方が嘔吐や下痢などの症状を感じている場合は、ウイルスを食品に移してしまうおそれがあるため、調理を控えてください。
ノロウイルスの症状を知って、しっかり予防しよう
ノロウイルスは感染力が非常に強く、誰でも感染する可能性がある身近なウイルスです。しかし、食材の加熱や手洗い、家庭内での衛生管理といった基本的な対策により、感染のリスクを減らすことが可能です。
症状が現れた場合は、早めに医療機関を受診しましょう。無理に食事を摂ろうとせず、少量ずつ水分を補給することが大切です。
体調がすぐれないときに調理や配膳を控えることも、家庭内での感染拡大を防ぐ重要なポイントです。日常の中でできる衛生習慣を意識し、感染を予防しましょう。


















