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犬もインフルエンザにかかる? 症状や予防対策、人間への感染について

2022.11.28| 感染症・消毒

寒さが日ごとに増してくると、インフルエンザに感染しないよう手洗い・うがいを徹底し、人混みではマスクを着用するなど、対策を強化し始める人も増えてきます。しかしこれらの対策をとれない動物、とりわけ、人間と密接にかかわりながら生活している犬は、ウイルスに感染することはないのでしょうか。そこで今回は、気になる犬のインフルエンザについて解説します。

犬インフルエンザはどんな病気?

動物間で流行するインフルエンザでは、鳥や豚のインフルエンザが有名ですが、犬インフルエンザも確認されています。最初に発見されたのは、2004年、米国フロリダ州。競馬場で開催されたドッグレースに参加していたグレイハウンドが呼吸器疾患を発症し、病院で診察を受けたところ、H3N8型のインフルエンザにかかっていることが判明しました。この型のウイルスはそれまで馬にしかみられなかったのですが、馬への感染後に突然変異を起こし、競馬場に残ったウイルスが、種を超え、犬に感染したのです。この事例以降、米国各地では犬インフルエンザが報告されるようになりました。

さらに2018年には、新型の犬インフルエンザ・H1N1型が中国南部の犬から発見されました。このウイルスは2009年に大流行した豚インフルエンザと同様のもので、こちらも突然変異を経て、犬に感染したと考えられています。

今のところ日本ではまだ犬インフルエンザの発症事例は確認されていませんが、人間はもちろん、さまざまなものが海外を行きかう今日、国内に犬インフルエンザがいつもたらされても不思議ではありません。また、インフルエンザウイルスは突然変異をするため、何かの拍子に他の動物から犬へと、種を超え、感染が広がることも起こり得ます。万が一に備え、自分のペットが犬インフルエンザにかかった場合の症状や治療法を知っておきましょう。

 

犬インフルエンザにかかるとどうなる?

獣医と犬

インフルエンザにかかると犬も人間と同様、適切な対処を怠っていた場合、重篤なケースを引き起こす可能性があります。インフルエンザウイルスへの感染を見落とさないためにも、発症した際の主な症状と、適切な治療法を知っておきましょう。

症状

主な症状は、くしゃみや鼻水、咳、食欲不振などがるほか、倦怠感から動きが緩慢になる傾向にあります。軽症であれば、これらの症状が10~30日程度続いた後、自然治癒しますが、重症の場合は、40~41℃程度の高熱を発し、正常時に比べて呼吸数が著しく増える呼吸促迫や、肩で息をするような荒い呼吸様式(努力呼吸)などが現れてきます。弱っているところに細菌が感染すると肺炎を発症し、ごくまれに致命的な状態に陥る場合もあるため注意が必要です。軽症であれば自然治癒するので特別な治療は必要ありませんが、症状が長引くようであれば、動物病院で診察を受けましょう。なお、感染しても症状がみられない場合もあります。

治療法

治療の基本は対処療法と栄養管理です。軽症の場合は安静にしていれば自然治癒するため、栄養バランスのよい食事を与え、脱水症状を起こさないよう水分補給をしっかり行いましょう。ただし、濃厚な緑色の鼻汁が出る場合は、細菌による二次感染の可能性が高いため、動物病院で診察を受け、必要があれば抗生剤を投与するようになります。また高熱など重症の場合は体力を回復させるため、点滴で水分や栄養を補給します。このとき、栄養剤と一緒に薬剤も投与すると、より効果的です。ただし、点滴は時間がかかるため、犬に大きなストレスを与えてしまう可能性があります。その際は皮下注射や皮下補液で、薬剤や栄養剤を投与する方法もあります。

 

犬インフルエンザを予防する、効果的な対策

元気のない犬

犬インフルエンザは比較的新しい感染症のため、免疫を持っている犬が少なく、万一、ウイルスに感染すると、その発症率は80%と高いです。しかしながら、効果的なワクチンが日本にはまだ導入されておらず、予防接種を受けることはできません。そのため、現段階では感染経路を絶つことが最も効果的な予防対策となります。犬インフルエンザウイルスの感染経路は、人間と同様、ウイルスの含まれた咳やくしゃみなどの飛沫を吸い込む“飛沫感染”と、ウイルスが付着したものに触れる“接触感染”の2つです。この2つを絶つため、ウイルスを運んでくる可能性のある動物と触れ合う機会を減らすよう心がけましょう。最も注意したいのは、野鳥との接触です。中国や韓国などでは、鳥インフルエンザウイルスが変異した型も発見されています。野鳥が海を渡ってこれらのウイルスを運んでくる可能性も考えられるため、野鳥が集まっているエリアにはなるべく近づかないようにしましょう。

また、犬インフルエンザウイルスは、消毒液(4級アンモニウム塩、塩素系消毒液)で簡単に殺菌できるので、ゲージやエサ用の器を消毒するのも効果的です。獣医に相談のうえ適切な消毒液を準備し、掃除のついでに消毒する習慣をつけましょう。また世話をする飼い主を介してこういったウイルスがゲージやペット用の器に付着しないよう、掃除やエサやり、触れ合いの前後には手指をしっかり洗い、アルコール消毒も行いましょう。

人間のインフルエンザは犬には感染しない

これまで発見された事例から、馬や豚、鳥などの動物がもつインフルエンザウイルスが犬へ感染することはありましたが、人間のインフルエンザウイルスが犬に感染することはないと考えられています。なぜなら、ウイルスと結合する細胞分子の受容体が、人間と犬では異なるからです。過去の事例では、ウイルスの突然変異によって種を超えて感染が広がってきたので、もちろん可能性はゼロではありません。しかしながら、人間から犬、または犬から人間へインフルエンザウイルスが感染するには、大幅な突然変異が必要とされるため、現状ではその可能性は非常に低いといえるでしょう。

まとめ

日本ではまだ発症例がないものの、いつ流行が起こってもおかしかくない犬インフルエンザ。大切なペットの健康を守るためにも、正しい知識や情報を収集しておくことが大切です。また、人間に付着したウイルスを介して感染を広げてしまう可能性も考えられます。インフルエンザウイルス以外にも、さまざまなウイルスや細菌によって感染症は引き起こされるため、帰宅時や、犬を飼っているお宅に訪問する際は手洗いを徹底し、病気の原因を作らないよう心がけましょう。

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