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【医師監修】なぜ冬にインフルエンザは流行するの?その理由と感染対策を紹介

2022.11.28| 感染症・消毒

冬の足音が近づくにつれ、木々の紅葉や街路樹に装飾されたイルミネーションがキレイに映え、それらを見るだけでも秋冬の冷たい空気を少し忘れられるかもしれませんが、これからの時期は季節性インフルエンザが例年流行していることを忘れてはいけません。

さて、インフルエンザが冬に流行するのには何か理由があるのでしょうか?夏には流行しないのでしょうか?そのような疑問にお答えするとともに、インフルエンザの感染対策についても解説していきます。

インフルエンザは、なぜ冬に流行するの?

インフルエンザウイルスは、低温で乾燥した空間では比較的長時間にわたって生存し、感染力を保持しやすいと考えられています。

例年、日本の季節性インフルエンザは12月から翌年3月に流行しますし、とくに寒さの底と言われる1月下旬から2月上旬にかけて、インフルエンザの流行もピークを迎えることがほとんどです。インフルエンザがなぜ冬季に流行するのかは、ウイルスの生存力や感染力とも関連がありますが、そのほかの要因を下記で解説していきます。

空気が乾燥しているため

冬季は乾いた空気が日本に流れ込みやすい気象条件であるため、夏季に比べて空気が乾燥しています。

湿度が高いと、ウイルスは水分によって重みを増すために地面に落下しやすく、空気中を漂う時間が短いわけですが、空気が乾燥しているとウイルスが空中を漂う時間は長くなってしまいます。

このように、ウイルスがふわふわと空気中を浮遊しやすい状況というのは、人と人との間で「飛沫感染」が起こりやすい状態です。なぜなら、感染した人のくしゃみなどで生じる飛沫が、人の鼻や口に近い高さで長い時間漂うことになり、呼吸などを通じて鼻や口の粘膜からウイルスが侵入しやすいからです。

気温が低いため

気温が低いと、人間の鼻やのどの粘膜は働きが弱くなるため、ウイルスに抵抗する力も弱くなってしまいます。そうなると、鼻やのどの粘膜を介してウイルスが体内に侵入しやすく、感染が起こりやすい状態だと言えます。

日照時間が短いため

日照時間が短くなると、体内でビタミンDが生成されにくくなるのをご存じでしょうか。ビタミンDというのは、免疫機能を調整してくれる働きが期待される栄養素で、食事でも摂取できるほか、皮膚に日光(紫外線)が当たることでも生成されます。

12月から1月にかけては1年のなかでも日照時間が短く、紫外線の強さが弱く量も少ないため、体内でのビタミンDの生成が減少しがちで、免疫力が低下しやすいと考えられています。

夏でもインフルエンザにかかることはある?

季節性インフルエンザが冬季に流行しやすいことは上記の通りですが、気温や湿度が高い夏季でもインフルエンザにかかることがあるため、用心しておく必要があります。

実際に、日本では夏季にインフルエンザにかかる患者数は少ないのですが、2019年には沖縄県で8月から9月にかけて流行した例もあります。

ここからは、夏季にインフルエンザに感染する原因を説明していきます。

原因①エアコンによる乾燥

夏でもエアコンをつけていると、室内の空気が乾燥しやすく、ウイルスが浮遊しやすい状態になってしまいます。エアコンをつけるときは、室内を定期的に換気し、湿度が低くなりすぎないように調節しましょう。

原因②夏バテによる免疫力の低下

夏の暑さによって、寝不足や食欲の低下に陥ったり、エアコンの効いた室内と外気温との差で自律神経が乱れて体のだるさを感じたりするなど、いわゆる「夏バテ」が起こります。この「夏バテ」は免疫力の低下を招く可能性があるために、注意が必要です。

免疫力が低くなると、インフルエンザウイルスが体内に侵入したときに発症しやすくなります。冷たいものや偏ったものばかりを飲食せずに、栄養バランスの良い食事を心掛けたり、エアコンや冷たい飲食で身体を冷やしすぎたりしないようにしましょう。

インフルエンザの感染対策

インフルエンザの感染経路はおもに「飛沫感染」と「接触感染」の2つであると考えられています。

それらの感染対策として、ウイルスに感染する機会を減らすことやウイルスにとっての好適環境をつくらないことが大切です。日常生活のなかでも実践しやすい対策がありますので、下記で紹介していきます。

手洗い・アルコール消毒をする

ウイルスが付着した手で、目や鼻、口を触ることでインフルエンザに感染する可能性があります。いわゆる「接触感染」です。

外出していると、不特定多数の人が触ったものに触れる機会が多いことでしょう。外出先では手洗いが頻繁にできるわけではないため、携帯できるアルコール消毒薬で手指をこまめに消毒するのがおすすめです。

帰宅時はすぐに、石けんで手指をきちんと洗い、仕上げにアルコール消毒をしましょう。そうすれば、自宅にインフルエンザウイルスを持ち込む機会を減らすことができます。

インフルエンザの流行時期は、人混みを避ける

人が密集するところでは、ウイルスを含む飛沫が空間中に数多く浮遊している可能性があり、飛沫感染のリスクが上がります。

インフルエンザの流行時期は人混みをできるだけ避ける行動をとることが望ましいのですが、どうしても人の多いところへ出かける場合にはマスク、とりわけ飛沫感染等をある程度防ぐことができる不織布製マスクを着用することがおすすめです。

また、インフルエンザ発症前で、自分自身がインフルエンザに既にかかっている可能性もあるので、人の多いところではマスクの着用や咳エチケットを守りましょう。

部屋を加湿する

インフルエンザウイルスは気温が低く、乾燥した環境を好みます。逆に、冬でも高温・多湿の環境下ではウイルスの生存力や感染力は弱まると考えられるので、ウイルスにとっての好適環境をつくらないことも感染対策となります。

屋内では暖房を適切に使用して室温を20~25℃に保つとともに、部屋が乾燥しないように湿度50~60%を目安に加湿しましょう。加湿器がない場合には、洗濯物を部屋干ししたり、湿らせたタオルを干したりしても簡単に加湿ができます。

インフルエンザが流行する冬はとくに感染対策を!

冬季はインフルエンザが流行する条件がそろっています。手洗い、手指の消毒をこまめに行ってウイルスに感染する機会を減らすとともに、部屋を加湿するなどしてウイルスが生存しにくい環境にすることが感染対策になります。

普段の生活のなかに取り入れられる対策ですので、これからの流行に備えて実践していくように心がけましょう。

佐藤医師よりコメント

夏季でもインフルエンザに感染することもありますが、主に冬季に流行します。その理由として、低温、低湿、また日照時間不足によるものが考えられます。感染対策として、手指衛生、部屋の加湿や空気の入れ替えなどを心がけていきましょう。

監修者

医師:佐藤留美

内科医・呼吸器科医・感染症科医・アレルギー科医。 久留米大学医学部を卒業後、大学病院、市中病院で臨床医として勤務。また、大学院で感染症の 研鑽を積み、医学博士を取得。内科・呼吸器・感染症・アレルギー等の専門医と指導医資格を多岐にわたり取得。現在は朝倉医師会病院呼吸器科部長として勤務。

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