コラム

column

貝からノロウイルスに感染? 牡蠣などの二枚貝から感染を防ぐには?

2022.11.28| 感染症・消毒

1、2月にかけて流行のピークを迎えるノロウイルスによる嘔吐・下痢症。ちょうどこの時期は牡蠣の旬でもあり、牡蠣が原因とされる食中毒などのニュースを耳にする機会も増えます。嘔吐や下痢などの症状が続くと、腸だけでなく体力的にもダメージを受けるため、できれば感染したくないですよね。そこで、今回は牡蠣をはじめとする二枚貝を食べる際の注意点について紹介しましょう。

ノロウイルスとは

ノロウイルスは、少量であっても体内に入ると腸内で増殖する、とても感染力の強いウイルスです。感染すると24~48時間の潜伏期間(感染から発症までの時間)を経て、急に激しい吐き気や嘔吐が始まり、続いて下痢や発熱、腹痛などの症状が現れます。集団生活を過ごす幼児や児童の間で流行することが多く、家庭や施設など共同生活を送る環境でも広がりやすい病気です。
感染ルートは大きく分けて3つあり、ノロウイルスが含まれる排泄物や食品に触れた手を介した「接触感染」、嘔吐物からの飛沫を吸い込むことによる「飛沫感染」や「空気感染」、そしてノロウイルスに汚染された食品を口にすることで感染する「経口感染」によるものです。

牡蠣などの貝類もノロウイルスの感染経路の一つ

生ガキ

二枚貝の体内にウイルスがたまる理由

ノロウイルスによる食中毒といえば、牡蠣などの二枚貝をすぐに思い浮かべる方も多いでしょう。ところが、ノロウイルスは人間の腸内でのみ増殖するもので、本来、二枚貝はノロウイルスを保有しておらず、その体内でウイルスが増殖することもないとされています。
ではなぜ、ノロウイルスが二枚貝から検出されることが多いのでしょうか。
それは、ノロウイルスに感染した人間の排泄物が原因だったのです。感染者の排泄物にはノロウイルスが含まれています。排泄物が下水処理場で浄化処理される際、ウイルスの大半はそこで死滅しますが、わずかに残ってしまったウイルスは河川から海へと流れ込みます。二枚貝はプランクトンを餌としているので、大量の海水を体内に取り込みますが、この時の海水にノロウイルスが含まれていると、二枚貝は餌と一緒にノロウイルスを体内へ取り込んでしまうのです。こうして二枚貝の体内にノロウイルスが蓄積され、それを人が食べることで食中毒が引き起こされます。食中毒の原因となる二枚貝では特に牡蠣が有名ですが、そのほかにシジミ、アサリ、ハマグリなどもあります。

生食用牡蠣と加熱用牡蠣の違い

スーパーなどでは「生食用」と「加熱用」の牡蠣が販売されていますが、どちらを買えばよいのか迷ったことはないでしょうか。「生食用」は「加熱用」より新鮮なイメージがあるかもしれませんが、実は、両者の違いは鮮度ではなく、牡蠣が育った海域なのです。保健所が定期的に海域の水質検査を行い、大腸菌や腸炎ビブリオなどの細菌数の基準をクリアすれば、生食用を出荷できる海域に指定されます。そのほかに、浄化処理を行えば「生食用」として出荷が可能となる海域も指定されています。こういった環境で育った牡蠣は生食しても、食中毒を起こす可能性が低いと考えられ「生食用」として販売されています。
一方、これらの指定海域以外で採れた牡蠣は、加熱して食べることを前提に「加熱用」として出荷されるのです。したがって、たとえ新鮮なものであっても「加熱用」は絶対に生食せず、十分に加熱して食べましょう。

貝からのノロウイルスの感染を防ぐには

生牡蠣は、栄養価が高く、冬の味覚として知られる食品ですが、最近は天然の岩かきが「夏かき」として市場に出回り、冬季以外でも口にする機会が増えています。そんな牡蠣をはじめとする二枚貝からのノロウイルス感染を防ぐためには、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。

加熱して食べるのがベスト

二枚貝の体内にたまったノロウイルスは、身や表面を洗っただけでは取り除けません。体内のウイルスを死滅させるためには、十分に加熱することが必要です。目安として、中心部が85~90℃になる状態で90秒以上の加熱が推奨されています。また、牡蠣フライにする場合も、中まで火が通るように十分に加熱してください。ノロウイルスを含んだ二枚貝を生食や不十分な加熱状態で食べてしまうと、ノロウイルスに感染し腸内で増殖してしまいます。たとえ生食用牡蠣であったとしても、体調がすぐれない時や、免疫力の低い幼児や高齢者は、生で食べるのは控えましょう。

手洗いを徹底する

ノロウイルスに汚染された二枚貝を調理した手や、調理器具も感染源となります。貝類の調理を行う際は、貝を扱った手で他の食品や調理器具を触らないようにし、調理後は必ず手をよく洗いましょう。手を洗う時は指輪をはずし、石けんを十分泡立て洗い、ぬるま湯でよくすすぎます。石けんそのものには、ノロウイルスを失活化させる効果はないといわれますが、手の脂肪などの汚れを落とすことで、手指からウイルスが剥がれやすくなる効果があります。手を拭く時は、共用のタオルを使うのは避け、使い捨てのキッチンペーパーを使用しましょう。仕上げにアルコールでの手指消毒を行えばより効果的と言えます。

調理器具や調理台を消毒・殺菌する 

まな板を消毒する写真

二枚貝を取り扱う際は、専用の調理器具(まな板、包丁など)を使用し、使用後には洗浄・消毒をして、他の食材への二次汚染を防ぐように気をつけましょう。
基本的には、二枚貝を取り扱ったまな板や包丁、へら、食器、ふきんなどは使用後すぐに洗剤で洗います。その後、洗浄だけでは落としきれないウイルスを死滅させるために、熱湯消毒か、次亜塩素酸ナトリウムによる消毒を行いましょう。熱湯消毒は、85℃以上の湯で1分以上の加熱をします。もしくは、次亜塩素酸ナトリウム(濃度0.02%)に浸すとウイルスを失活化させることができます。一般的な感染症対策として用いられる消毒用エタノールでは、ノロウイルスを死滅させることはできず、家庭用塩素系漂白剤に含まれる次亜塩素酸ナトリウムが有効だといわれています。家庭で消毒液を作る方法は下記の通りです。

【濃度0.02%の消毒液の作り方】(次亜塩素酸ナトリウムの濃度が5%の場合)
① 500mlの空のペットボトルを用意します。
② その中にペットボトルのキャップ半分弱(約2ml)の塩素系漂白剤を入れます。
③ そこにいっぱいになるまで水を加えたら完成です。
※ 消毒薬は、必ず子どもの手の届かない場所に保管しましょう。

まとめ

牡蠣は、別名「海のミルク」とも呼ばれるほど、タンパク質やカルシウムなどの栄養価が高い海の幸。そのほかにも、アサリやシジミなどの貝類はミネラルが豊富なので、上手に摂取したい素材です。二枚貝の適切な食べ方や調理方法を知って、ノロウイルスに感染しないように気を付けて味わいたいですね。

 

この記事を読んだあなたに
オススメの製品