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ノロウイルスが流行る時期とは? 低温乾燥の季節は要注意

2022.11.28| 感染症・消毒

ノロウイルスによる感染性胃腸炎や食中毒は、年間を通して発生していますが、特に冬になると感染者が急増します。なぜ寒い季節になるとノロウイルスによる感染がピークを迎えるのでしょうか。今回はその原因や効果的な予防法についてご紹介しましょう。

ノロウイルスが流行る時期

毎年、11月~12月になるとノロウイルスの感染が増え、各自治体で感染性胃腸炎警報が発令されるほどの流行期を迎えます。国立感染症研究所による「週別ノロウイルス等検出状況」(2018年36週目~2019年35週目)を見てみると、確かに11月頃から検出数が一気に増え始め、3月末頃まで多くの発症が報告されています。このように冬に流行期を迎える背景には、大きく分けて2つの要因が考えられます。

国立感染症研究所「週別ノロウイルス等検出状況」

低温・低湿度の環境

気温が低く湿度が下がる冬は、ノロウイルスにとって感染を拡大するのに好環境だといわれています。具体的には次の点が挙げられます。

1. ウイルスの感染力が高くなる
ノロウイルスは低温・低湿度な環境下では感染力を高め、生存期間が長くなるといわれます。気温20℃の環境では3~4週間の生存期間であるのに対し、気温4℃の環境では8週間生存できるという報告もあります。

2. 喉や気管支にウイルスが付着しやすくなる
冬は外気が乾燥する上に、夏場ほど水分を積極的に摂取しなくなるので、喉や気管支の粘膜が乾いて傷みやすくなり、そこにウイルスが付着して感染します。

3. ウイルスが乾燥して浮遊しやすくなる
低湿度な環境では咳やくしゃみによる飛沫はすぐに乾燥してしまいます。ウイルスは粒子となって空気中を漂うことで感染を広げます。

牡蠣などの二枚貝を口にする機会が増える

生牡蠣

冬になるとノロウイルスによる食中毒の発生が増えます。この原因として有名なのが、寒い季節に旬を迎える牡蠣などの二枚貝です。これらは体内にノロウイルスを蓄積している可能性があり、そのノロウイルスに汚染された二枚貝を生食、もしくは不十分な加熱で口にすると感染してしまうのです。冬は牡蠣を口にする機会が増えるため、ノロウイルスによる食中毒が増加すると考えられています。実際、冬に起こる食中毒のうち、約8割はノロウイルスによるものとなっています。

厚生労働省「平成30年病因物質別月別食中毒発生状況」

上記のような理由から、冬に流行しやすいと考えられるノロウイルスですが、近年では季節を問わずノロウイルスの感染報告が上がっています。2017年から2018年にかけての「週別ノロウイルス等検出状況」を見ると、5、6月頃まで流行期が続きました。つまり、冬はもちろん、年間を通した予防・対策が重要となります。

ノロウイルスの感染経路

現在、ノロウイルスを予防するワクチンは開発されていないため、感染を防ぐにはまず感染経路を断つことが重要です。ノロウイルスによる感染には、食べ物から感染する場合と、人から人へと感染する場合の大きく分けて2つの経路があります。

食べ物から感染する場合

ノロウイルスが付着した食材を生食、または十分に加熱せずに食べると食中毒を引き起こします。特に先にも述べた、牡蠣などの二枚貝による食中毒が有名です。この場合、中心部が85~90℃になるように90秒以上加熱すればウイルスは死滅するとされています。生食を避けてしっかり加熱調理しましょう。
また、汚染された二枚貝などを扱ったまな板や包丁、ボウルなどの調理器具を使うことでも感染が広がります。二枚貝を調理する場合はその都度、手をしっかり洗い、調理器具は85℃以上の熱湯で1分以上、消毒するようにしましょう。
そのほかには、井戸水や簡易水道水も要注意です。消毒が不十分な水は感染を引き起こす恐れがあるため、必ず煮沸してから摂取しましょう。

人から人へ感染する場合

感染者の嘔吐物や便には大量のウイルスが含まれており、その量は便1g中に数億個といわれています。それらに触れた手指を介してウイルスが口に入ると感染します。また、嘔吐物の飛沫が乾燥して空気中を漂い口から侵入することでも感染する場合があります。
なお、人によっては感染しても発症しない場合や、軽い風邪程度で済むこともあるようです。ただし、そのような場合でも体内からウイルスを排出している可能性があり、本人の自覚がないまま周囲に感染を広げてしまうケースもあります。ノロウイルスは、10~100個という少量でも感染してしまうほど感染力が非常に強いのが特徴です。トイレの便座やふた、床、ドアノブなどは日頃から清潔に掃除をするように心がけましょう。

ノロウイルスの潜伏期間

砂時計

ノロウイルスの潜伏期間は短く、24~48時間といわれています。急に強い吐き気や嘔吐、下痢、腹痛などの症状が現れます。通常は1、2日で症状が治まり、後遺症もないのが一般的ですが、乳幼児や高齢者、免疫力が低下している人は脱水症状を引き起こしやすいので注意が必要です。
また、症状が治まった後も、1週間から1カ月間は排便時にウイルスを排出し続けるといわれているため、感染者や周囲の人は手洗いや、トイレの消毒などを引き続き徹底することが大切です。

まとめ

ノロウイルスは、乳幼児から大人まで幅広い年齢層で発症する感染症です。寒く乾燥した冬に猛威をふるうといわれますが、最近では全国的に年間を通して発症が報告されているため、日頃から手洗い・衛生管理など基本的な予防に努めましょう。

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