2020.06.04 ノロウイルスなど感染症予防について

【医師監修】集団食中毒を防ぐために! 検便の必要性を知ろう

ノロウイルスなど感染症予防について
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食中毒を引き起こす恐れのあるノロウイルス。感染すると嘔吐や下痢などの症状がみられますが、感染してもこれらの症状が全くでない「不顕性感染」や、軽い風邪程度の症状で済むケースもあります。このような場合、感染に気付かないままウイルスを広げる可能性があるため、特に調理などに従事する人は定期的な検便検査が必要とされています。今回は検便検査の重要性について説明します。

検便はなぜ必要?

食中毒を引き起こす恐れのある細菌やウイルスでは、サルモネラ菌やO157、ノロウイルスなどが有名です。これらは食品に付着していることが多く、それを口にすることで感染し、食中毒が引き起こされます。通常は激しい嘔吐や下痢、腹痛などに襲われることが多いですが、場合によっては、軽い風邪のような症状で済むことや、症状が全くみられない「不顕性感染」と呼ばれるケースもあります。そういった感染者が感染に気付かないまま調理などを行うと、手指を介して食材にウイルスを付着させる可能性があり、二次感染を引き起こすリスクが考えられます。特に学校や施設など大勢に提供する調理に携わる人では、集団食中毒を招く恐れもあるのです。

こういった事態を防ぐためには、検便検査によって食中毒を起こす可能性のある細菌やウイルスを保有していないことを明らかにする必要があります。また検査で、万が一感染者が見つかったとしても、二次感染を引き起こす前に調理に携わらせないなどの適切な対処をとることが可能です。いち早く感染者を見つけ出し、集団感染を引き起こさないことこそ、検便検査の大きな意義といえるでしょう。なお、定期的な検便検査が必要とされるのは、以下のような人たちです。

調理者

<定期的な検便検査が必要とされる人>
・学校給食調理従事者
「学校給食衛生管理基準」により、赤痢菌、サルモネラ属菌、腸管出血性大腸菌血清型O157、そのほか必要な細菌について、毎月2回以上検便を受ける必要があります。

・大量調理施設の従業員
「大量調理施設衛生管理マニュアル」により、同一メニューを1回300食以上、または1日750食以上提供する調理施設に勤める人は、毎月1回以上、検便を受ける必要があります。なお、検便検査には腸管出血性大腸菌の検査を含み、10月~3月までの間は月に1回以上、もしくは必要に応じてノロウイルスの検便検査が推奨されています。

・保育所や認定こども園などの保育施設の保育士や調理者
地方自治体の条例などにより、定期検便が義務付けられています。

・介護・障害者施設、老人ホームなどの社会福祉施設の従業員
これらの社会福祉施設で調理に従事する人は、検便検査を受ける必要があります。

・水道事業従事者
多数の市民の飲み水に関わるため、検便検査が義務付けられています。自治体によっては、検査項目が多く定められている場合があります。

・祭り、PTAの催し、バザーなどのイベントで飲食物を提供する人
検便が必要です。検査項目の詳細は、所轄の保健所に確認しましょう。

上記で紹介した人以外にも、法律や条例の定めにより検便検査が必要とされるケースがあります。詳しくは各自で保健所や自治体へ確認しておきましょう。

検便検査の種類について

医師ポイントさまざまな規定によって検便が義務付けられていますが、検出したい病原物質によって、受ける検査が変わってくるようです。ここでは、腸内細菌を検出するものと、ノロウイルスを検出するものの2種類を紹介します。

●腸内細菌検査
腸管出血性大腸菌として知られるO157や、赤痢、サルモネラ菌(腸チフス・パラチフス菌を含む)といった腸内細菌について調べる検査です。この検査を定期検査項目として位置付けている規定が多いです。

●ノロウイルス検査
ノロウイルスを検出する検便検査です。ノロウイルスが流行する冬季に、腸内細菌検査に加えて、ノロウイルス検査を受けることを推奨している規定もあります。ノロウイルス検査の方法にはいくつか種類がありますが、ここでは代表的な2つを紹介します。

・RT-PCR法(遺伝子増幅法)
便や嘔吐物から、ノロウイルスの遺伝子を検出する検査方法です。感染しているかどうかの判定だけでなく、感染している場合はウイルスの遺伝子型までを特定することができます。遺伝子検出タイプの検査は、現在受けられるノロウイルス検査の中では、特に感度が高いと考えられており、専門機関でのみ受けられます。操作が煩雑であり、判定には時間と費用がかかるとされていますが、ウイルスの保有をより確実に判定するには、この検査法が有力でしょう。この検査はインターネットなどから申し込むことも可能で、検査機関によって詳細は異なりますが、基本的には以下の流れで行われます。

<検査の流れ>
1. 検査の申し込み
2. 採便容器の受け取り(郵送)
3. 採便
4. 採便容器の返送(冷凍保存で郵送)
5. 検査機関にて検査の実施
6. 検査結果の受け取り

検査結果が分かるまでの日数や費用は、検査の種類や機関で異なるため、事前に問い合わせてみましょう。

・イムノクロマト法(ノロウイルス抗原検査)
検査キットを用いて便に含まれるノロウイルスを検出する検査で、比較的、簡易にできる検査方法として知られています。専門の検査機関だけでなく、医療機関でも受けることができますが、病院では医師が必要と認めた場合にのみ実施されることになっています。肛門を綿棒でこする、もしくは排泄した便から検体を取り、それを検査液と混ぜてキットに垂らすと、わずか15~30分ほどで結果が判明します。またRT-PCR法と比べてコストも低いので、ノロウイルス流行期の定期検査などで用いられるケースもあるようです。ただしウイルスの検出感度が高いわけではないため、ノロウイルスに感染していたとしても、陽性反応がみられない事例も報告されています。あくまでも診断の補助として用いられるものと理解してください。
なお、この検査を医療機関で受ける場合、以下のいずれかに当てはまる人のみ、健康保険が適用されることになっています。

・3歳未満、もしくは65歳以上の人
・悪性腫瘍の診断を受けている人
・臓器移植後の人
・抗悪性腫瘍剤、免疫抑制剤、または免疫抑制効果のある薬剤を投与中の人

なお、大量調理施設衛生管理マニュアルでは、調理従事者がノロウイルスによる感染性疾患を発症していることが判明した場合、感度の高い検査によって「ウイルスを保有していないこと」が確認されるまでの間は、調理業務は控えるのが望ましいとされています。この場合の感度の高い検査とは、RT-PCR法でありイムノクロマトでは十分ではないことを注意しておきましょう。

まとめ

集団食中毒を防ぐためには、細菌やウイルスが流行しているかどうかに関わらず、日ごろから手洗いや消毒を徹底し、それらを体に取り込まないように注意することが重要です。併せて定期的な検便検査でより確実に、それらを保有していないことを明らかにしてくださいね。

木村医師よりコメント
ノロウイルスは、感染力がとても高いウイルスです。集団感染を予防するためにも、食品を扱う仕事をする場合には定期的な検便が必要になります。しかし、下痢や嘔吐など胃腸炎の症状で医療機関を受診した場合には、診断のために検便を行うことは限られた人が対象となります。胃腸炎になってしまった場合には診断の有無にかかわらず特効薬がないため、補水がとても大切です。感染の拡大に注意して、症状がある間は療養するようにしてください。

監修者

監修者

医師・木村眞樹子
都内大学病院、KDDIビルクリニックで循環器内科および内科として在勤中。内科・循環器科での診察、治療に取り組む一方、産業医として企業の健康経営にも携わっている。総合内科専門医。循環器内科専門医。日本睡眠学会専門医。ビジョントレーニング指導者1級資格。

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