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【医師監修】ノロウイルス感染者は出勤停止? 法律や会社規則を知っておこう

2022.11.28| 感染症・消毒

ノロウイルスに感染したら、できるだけほかの人との接触を避け、感染を広げないように努めることが重要です。それが正論と分かってはいるものの、社会人のなかには、仕事の責任から無理をしてでも出勤したいと考える人も少なからずいるでしょう。しかし、これが許されてしまっては、感染がどんどん広がってしまいます。法律による規制はないのでしょうか。そこで今回は、ノロウイルス感染者の出勤停止に関するさまざまな規定や、欠勤する際の給与補償について解説します。

「ノロウイルスで出勤停止」に関する、法律と会社規則

会社規則イメージ

●法律上はどうなっている?
現在日本では、感染症法第18条、労働安全衛生規則61条において、ある一定の感染症にかかった場合、出勤停止の措置を取ることが定められています。対象となる疾病は感染症法第6条において定められており、代表的なものには、エボラ出血熱、SARS、コレラなど、感染時のリスクが高く、国民に広がると甚大な被害をもたらすと考えられるものがあります。これらの法律によると、ノロウイルスは対象には含まれていないため、法律上は出勤停止になりません。

ただし、飲食店や給食施設など、食品を取り扱う業種においては、ノロウイルス感染者が従事することで大規模な食中毒を引き起こす危険性があるため、出勤停止の処置をとることが望ましいと、厚生労働省より指導されています。この通達には法律に準じる強制力があり、違反した場合は追加徴税などの罰則を受けることがあります。

●会社規則で出勤停止になる場合もある
ノロウイルスは、法律上は出勤停止が定められていません。しかし、ノロウイルスに感染した従業員が出勤し、社内に感染を広げてしまうと、業務全般に大きなダメージを及ぼす危険性があるため、会社によっては出勤停止を就業規則として定めているケースもあります。特に、福祉施設や医療関係施設など、免疫力の低下した高齢者や乳幼児、患者と接する職場においては、ときに死者を出すこともあるため、従業員の管理はより徹底されています。従業員本人が感染した場合に限らず、その家族に感染者がいる場合や、ノロウイルス感染者と接触した可能性がある場合も、従業員に感染していないことが判別できるまで、一定期間の出勤停止が命じられることもあるようです。

ノロウイルスによる出勤停止はいつまで?

ノロウイルスに感染すると、嘔吐や下痢といった症状が1、2日続きます。感染者の便や嘔吐物にはノロウイルスが大量に含まれていますが、この飛沫を吸いこむことで感染が広がってしまいます(飛沫感染)。また、症状のピークが過ぎた後も、発症から1週間程度はノロウイルスが体内に保有されている可能性があります。この期間も感染を広げるリスクはあるため、職場によっては発症から1週間は出勤停止と定めている場合もあるようです。

なお、給食施設など、直に調理に携わる職場においては、さらに厳しい管理のもと出勤再開の判断がされます。この場合、ノロウイルス感染者は症状の有無でなく、好感度の検便検査で、ノロウイルスを保有していないことが確認されるまで出勤停止となるようです。

また、家族にノロウイルス感染者がいる場合の出勤停止では、感染者が完治すれば出勤停止も解除されるケースがほとんどですが、会社によっては、すぐに出勤可能とならないケースもあります。なぜなら、ノロウイルスには24~48時間の潜伏期間があるので、家族が完治した翌日に感染症が発症する場合が考えられるからです。そのため、家族が完治した後も、1、2日は自宅待機するよう定めているケースもあるようです。

ノロウイルスで欠勤! 給料はどうなる?

給料イメージ

ノロウイルスで欠勤する際、気になるのがその期間の給料です。体調不良などの理由で会社を休む場合、以下の2つの手段によって収入を確保することができます。それぞれの支給条件や金額などについて理解しておきましょう。

●休業手当
休業手当とは、労働者の生活の保護を目的とした制度で、労働基準法第26条において「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」と定められています。法律では定めのないノロウイルスによる出勤停止が、就業規則によって定められている場合、これは「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当たるため、従業員は休業手当を申請することができるのです。
なお、欠勤期間中に公休日や、会社規定による休業日が含まれている場合、これらの日は支給対象外となり、休業手当は支給されません。

●有給休暇
ノロウイルスに感染したことで出勤停止が命じられた場合、休業手当が申請できますが、給料の6割程度しか支給されないため、全額支給される有給休暇を利用することも可能です。ただし、有給を残しておきたい場合などは、会社から「有給休暇をとるように」と指示されたからといって、必ずしも従う必要はありません。労働者の権利として、先に紹介した休業手当を受けられることも覚えておきましょう。
なお、就業規則でノロウイルスによる出勤停止が定められていない場合は、休業手当は申請できません。有給休暇も残っていない場合などは、欠勤期間はまるまる無給となってしまうので、事前に規則を確認しておきましょう。

まとめ

ノロウイルスに感染した場合、法律による規定はなくても、会社規則で出勤停止を命じられることはあるようです。出勤できるタイミングも規定によってさまざまであるため、自己判断ではなく、会社のルールを確認して実践しましょう。また、会社から出勤停止を命じられた場合、休業手当を申請できる場合もあります。有給休暇が利用できなかったり、利用を望まない場合の生活補償の手段として、正しく理解しておくとよいでしょう。

 

木村医師よりコメント

ノロウイルスは感染力が高く、容易に周囲に感染が広がってしまいます。飲食業などではノロウイルス感染の定期的な検査があり、感染した際には出勤停止規定が設けられていることが多いです。欠勤する場合には、有給休暇を取得するのか休業手当とするのか、会社に制度を確認し、どのような形で休みを取るのか決めることをおすすめします。

監修者

医師:木村眞樹子

都内大学病院、KDDIビルクリニックで循環器内科および内科として在勤中。内科・循環器科での診察、治療に取り組む一方、産業医として企業の健康経営にも携わっている。総合内科専門医。循環器内科専門医。日本睡眠学会専門医。ビジョントレーニング指導者1級資格。

 

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