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【医師監修】ノロウイルス対策にラクトフェリンは効果的? 免疫力を高める働きについて

2022.11.28| 感染症・消毒

毎年11月~3月頃に流行することが多いノロウイルス。ワクチンがないため、基本的にはこまめな手洗いや消毒などでウイルスの感染経路を断つことが有効な感染対策と考えられています。しかし近年、感染予防に効果が期待できる手段として”ラクトフェリン”という成分の働きが注目されています。今回はラクトフェリンの働きについて詳しく説明します。

ラクトフェリンがノロウイルス対策に良い?

牛乳

ラクトフェリンとは、人やほ乳類の乳をはじめ、涙や唾液、血液中などに含まれる多機能たんぱく質のことで、幅広い病原性微生物に対して感染防御作用を示すといわれています。人の場合、出産後数日の間に分泌される初乳に最も多く含まれており、生後間もない赤ちゃんをさまざまな感染症から守ると考えられています。また、腸内環境の改善や貧血予防など、あらゆる健康促進効果も期待できることが分かっています。
さらに近年では、多くの研究からノロウイルス対策にも効果が期待できることが明らかになってきました。まずは人がノロウイルスに感染するしくみと、ラクトフェリンのノロウイルスに対する働きについて説明します。

●ノロウイルスに感染するしくみ
ノロウイルスは非常に小さなウイルスですが、10~100個程度の少量が体内に入っただけでも、感染・発症してしまうといわれるほど強い感染力をもちます。主な感染経路には、ノロウイルスに汚染された食品を口にすることや、ノロウイルス感染者の便や嘔吐物の飛沫を吸い込んだり、それらに触れた手指が口に入ったりすることが挙げられます。こういった経路を介して体内に取り込まれたノロウイルスは、小腸粘膜の表面にある細胞で感染し、増殖すると考えられています。その結果、小腸の炎症や、胃の運動神経の低下・麻痺が起こされ、水分や塩分を調節する機能が壊されるため、激しい嘔吐や下痢の症状がみられます。

●ラクトフェリンがノロウイルスから体を守る!
ラクトフェリンがノロウイルス対策に有効と考えられる理由には、ラクトフェリンの2つの働きが関係しています。ひとつは、ラクトフェリンが腸内細胞の表面に結合するという働きです。これにより、細胞をノロウイルスからガードし、守ってくれると考えられています。もうひとつが、ラクトフェリンの一部が胃の中で”ラクトフェリシン”という物質を生成するというもの。このラクトフェリシンはノロウイルスにくっつくことで、ウイルスが腸の表面にある細胞に侵入できないようにしてくれるのです。

実際にラクトフェリンの摂取が、感染性胃腸炎の発生率にどう影響したかを調べた研究では、ラクトフェリンを摂取しなかったグループの発症率は22.4%であったのに対し、ラクトフェリンを摂取していたグループでは11.6%だったそうです。こういった結果からも、ラクトフェリンにはノロウイルスの感染予防効果が期待できると考えられています。

ラクトフェリンで症状が軽減される?

ラクトフェリンにはノロウイルスの感染予防効果に加えて、発症後の症状を軽減してくれる効果も期待されています。というのも、ラクトフェリンには免疫細胞のひとつであるNK(ナチュラルキラー)細胞の働きを活性化する作用があることも明らかになっているのです。NK細胞はウイルスに感染した細胞をいち早く見つけだし、攻撃するという働きをもちます。そのため、たとえノロウイルスに感染してしまったとしても、ラクトフェリンによってNK細胞が活性化されることで、発症後の症状を和らげたり、重症化を防いだりする効果が期待できると考えられているのです。

通常、ノロウイルスに感染すると、感染者の便には多くのウイルスが含まれ、それは症状が治まった後でも数週間から1カ月程度続くといわれています。この便内へのウイルス排出期間に対するラクトフェリンの効果について、次のような研究報告があります。ノロウイルス感染者に15日間ラクトフェリンを含む錠剤を与えたところ、ラクトフェリンの摂取を開始して5日目の時点で、摂取した人は、しなかった人に比べて、便内から検出されたノロウイルスの割合が半分以下に減少したというのです。さらに10日目の時点でも、その割合は有意に減少したことが報告されています。この研究結果から、ラクトフェリンが感染後のウイルス排出期間の短縮に貢献していることが期待できるといえそうです。

赤ちゃんや子どもにもラクトフェリンは効果的

ミルクを飲む赤ちゃん

ラクトフェリンは初乳に多く含まれていることからも、赤ちゃんや子どもも安心して摂取できるといえます。実際、ラクトフェリンが添加された育児用の調製粉乳なども市販されています。ラクトフェリンは熱に弱い性質があるため、高温で殺菌された牛乳や乳製品では摂りにくいと考えられています。低温殺菌された牛乳やチーズからは摂取できますが、その量はごくわずかとされています。効率的に摂取するにはラクトフェリンが配合されたヨーグルトや、サプリメントなどがオススメです。赤ちゃんや子どもの場合、サプリメントの錠剤は上手に飲み込めないので、ヨーグルトのほうが摂取しやすいでしょう。なお、ラクトフェリンの効果は摂取後24時間ほどしか持続しないといわれています。そのため、なるべく毎日継続して摂取することが大切です。

まとめ

ノロウイルスの予防や、症状の軽減に効果が期待されるラクトフェリン。大人はもちろん、小さな子どもや赤ちゃんにも、その効果は期待できそうです。ただし、しっかりと効果を得るには継続して摂取することが必要なので、ヨーグルトやサプリメントなど、毎日続けやすい方法で摂取してくださいね。ラクトフェリンを味方につけて、ノロウイルスから自分の体を守りましょう。

木村医師よりコメント

ラクトフェリンは、赤ちゃんの身体を守るために母乳に多く含まれています。最近では、赤ちゃんだけでなく、大人もラクトフェリンを摂ることで感染の予防効果を高めたり、内臓脂肪を減少させたりする効果があることがわかってきました。どのような食品も偏って摂ることはお勧めしませんが、日々の食生活の中にラクトフェリンをうまく取り入れて、体の免疫を上げていきましょう。

監修者

医師:木村眞樹子

都内大学病院、KDDIビルクリニックで循環器内科および内科として在勤中。内科・循環器科での診察、治療に取り組む一方、産業医として企業の健康経営にも携わっている。総合内科専門医。循環器内科専門医。日本睡眠学会専門医。ビジョントレーニング指導者1級資格。

 

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