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【医師監修】ノロウイルスの特徴と原因は?正しい知識と予防法で徹底対策!

2022.11.28| 感染症・消毒

例年、冬の時期に下痢や嘔吐などを引き起こすノロウイルス。家庭内での感染や、施設や学校などで集団感染を引き起こすこともあるので注意が必要な感染症です。ここでは、ノロウイルスの特徴や予防対策について紹介します。

ノロウイルスとは?

ノロウイルスは、アメリカのオハイオ州ノーウォークという町で集団発生した急性胃腸炎の患者の便から検出されたウイルスが由来です。当初は、「ノーウォークウイルス」と呼ばれていましたが、2002年の国際ウイルス学会で正式に「ノロウイルス」と命名されました。主な症状は激しい下痢や嘔吐などで、11月頃から流行がはじまり、12~3月にピークとなる冬の時期に多い感染症ですが、年間を通して発生しています。

●ノロウイルスの特徴と原因

ノロウイルスは乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層にみられる感染症で、長期免疫が成立しないため何度もかかるのが特徴です。ノロウイルスの主な感染経路は、汚染された水や食品、特にカキなどの二枚貝などを十分に加熱せずに食べることで感染するケース(経路1)や、ノロウイルスに感染した人が不十分な手洗いの状態で調理を行って汚染された食品を食べることで感染するケース(経路2)などがあります。また、感染力が強くノロウイルスに感染した患者さんの便や嘔吐物を処理した際、ウイルスが手や物品を介してヒトからヒトへ、また不適切な処理で残ったウイルスが口から取り込まれ二次感染を引き起こすこともあります(経路3)。

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●感染したら熱はでる?ノロウイルスの症状とは

ウイルスに感染してから発症するまでの潜伏期間は24~48時間で、主な症状は吐き気、嘔吐、下痢、腹痛で、発熱は一般的に軽度なことが多く、頭痛、筋肉痛をともなうこともあります。突然の嘔吐や吐き気が強烈に起こるのが特徴です。通常であれば発症後1~2日程度で症状は治まります。感染しても全員が発症するわけではなく、発症しない場合や軽い風邪のような症状の人もいます。

●ノロウイルスの見分け方・検査方法

一般的には、臨床症状や感染状況などからノロウイルスを原因として推定されることが多いのですが、臨床症状だけではノロウイルスによる感染症かどうかを見分けることはできません。ノロウイルスの検査方法には、抗原反応と遺伝子検出があります。
抗原検査は、便中のノロウイルスを検査キットで検出するものです。この検査は、短時間で判定できるメリットがありますが、ノロウイルスに感染していても陽性にならない場合もあり、見逃しのデメリットがあります。
より確実な検査方法は、遺伝子検査です。患者の便や嘔吐物を用いて遺伝子をターゲットにしてウイルスの検出を行い診断します。こういった検査は、食中毒や集団感染の原因を追究するなどの目的で行政機関や研究機関等で行われており、医療機関では行うことはできません。

ノロウイルスに感染した場合の対処法

ノロウイルスには有効な治療薬はありませんので、症状を緩和する対症療法を行うことになります。下痢や嘔吐により体外に水分が出て行ってしまいますので、水分補給を適宜行い脱水症状を防ぐようにしましょう。脱水症状がひどい場合には、病院で輸液を行うなどの治療が必要となります。また、乳幼児や高齢者の場合は、嘔吐によって気道が塞がり窒息を起こしたり、誤嚥性肺炎によって亡くなるケースがまれにあるため注意するようにしましょう。

●脱水対策と対症療法を

ノロウイルスでは下痢や嘔吐などにより脱水症状になりやすいので、症状が落ち着いた時に少しずつ水分補給を行うようにしましょう。また、水分とともにナトリウムやカリウムといった電解質も体外に排出してしまうので、電解質を含んだ経口補水液などスムーズに水分補給できる飲み物がおすすめです。特に子どもや高齢者は脱水症状になりやすいので、より注意して水分補給をこころがけましょう。

●二次感染を防ぐために適切な汚物処理を

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ノロウイルスは感染した人の便や嘔吐物にはノロウイルスが大量に含まれ感染源となりうるので、その処理には十分注意しましょう。処理を行う際は、身体にウイルスが付着するのを防ぐため、使い捨てのガウン(エプロン)、マスク、手袋、足元はビニール袋で覆うなどで対応します。周囲に飛び散らないように静かに拭き取り、ビニール袋に密閉して廃棄します。嘔吐物が付着した床などは200ppm(0.02%)次亜塩素酸ナトリウムをしみ込ませたペーパータオルなどで覆うか浸すように拭きます。次亜塩素酸ナトリウムは金属を腐食させてしまうので、消毒後の薬剤を拭き取るなど注意しましょう。また、嘔吐物や便などが乾燥すると容易に空中に漂い、これが口に入って感染することがあるので、嘔吐物や便は長時間放置せずに乾燥しないうちに速やかに処理を行うことが重要です。
嘔吐物や便で汚れた衣類は適切な方法で消毒してから他のものとは別に洗濯機で洗います。まず付着している嘔吐物や便を飛び散らないように水で洗い流してから、200ppm(0.02%)の塩素系消毒液に30~60分程度漬けるか、85℃以上の熱湯に1分間以上漬けて消毒し、その後普通に洗濯します。ただし、塩素系消毒薬には色落ちや生地を傷めてしまう場合もあるので、注意して使用しましょう。
嘔吐物を処理した後は、手袋をはずしてしっかり手洗いを行います。石けん手洗いの後に、アルコール消毒薬を使用することで手洗いの効果を高めることができます。

ノロウイルスの予防策

ノロウイルスの感染は食品からだけではありません。感染した人の便や嘔吐物には大量のウイルスが存在していますので、排便時や嘔吐物を処理した際、手がウイルスで汚染されてしまいます。その手で蛇口やドアノブを触るとそこにウイルスが付着し、そこから他の人へとウイルスが拡がっていきます。そのため、感染経路を遮断するために手洗いは感染防止に有効な対策です。調理の前、食事の前、トイレに行った後、汚物の処理の後には必ず行いましょう。また、調理器具等は次亜塩素酸ナトリウムや熱湯を利用した消毒が有効です。

●食品はしっかり加熱! 特に牡蠣は要注意!

ノロウイルスによる汚染のおそれのある食品、カキなどの二枚貝は、中心部が85~90℃で90秒以上しっかり加熱しましょう。さっと熱湯をかけただけでは、完全にウイルスの活性を失わせることができません。調理器具は200ppm(0.02%)の次亜塩素酸ナトリウムで浸すように拭いて対応します。ただし、汚れていると十分に消毒効果が発揮できませんので、あらかじめ洗剤などを使用し十分に洗浄してから消毒しましょう。まな板、包丁、食器、ふきん等は熱湯(85℃以上)で1分以上の加熱も有効です。

●家のなかはトイレを重点的に消毒する

ノロウイルスの患者さんがいる場合、感染拡大につながりやすいトイレはこまめに200ppm(0.02%)次亜塩素酸ナトリウムで消毒します。蛇口や電気のスイッチ、ドアノブ、水洗レバー、手すりなどよく手が触れる場所は忘れずに対応することが重要です。ただし、次亜塩素酸ナトリウムは金属腐食性がありますので、金属部分に使用した場合は消毒後に薬剤を拭き取るようにしましょう。もしくは、次亜塩素酸ナトリウムが使用できない箇所は、十分な量の消毒用エタノールで2~3回消毒することで対応します。また、ノロウイルスに感染した人は、トイレを利用した際、フタをして流すことでウイルスの周囲への飛散を抑えることができます。

●症状のない「不顕性感染」に要注意

ノロウイルスは感染していても下痢や嘔吐などの症状が出ない場合や軽症で終わる場合もあります。感染していても症状が出ない「不顕性感染」の場合でも、便中にウイルスを排出することがあり、知らない間に感染源となってしまうので注意が必要です。そのため、家族や一緒に食事をした人にノロウイルスの症状が出た場合は、自身も感染している可能性があると考え予防対策を徹底しましょう。

まずは手洗い・うがいをしっかり!ノロウイルスから身を守ろう

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日々の生活の中でノロウイルスに感染するリスクはさまざまなところに潜んでいます。ノロウイルスの感染経路を理解し、感染しないために日頃から予防対策を行うことが重要です。ノロウイルスを体内に取り入れないように手洗い・手指消毒の徹底、また、ノロウイルスの感染経路となる箇所はこまめに消毒するなどして対応しましょう。

工藤医師よりコメント

ノロウイルスは一度感染してしまうと、下痢や嘔吐などの症状が治まっても2週間程度は便からウイルスを排出し続けていることがあります。そのため、症状が治まったからと安心せず、手洗い・消毒などを励行し、二次感染を防ぐようにしましょう。

監修者

医師:工藤

内科医・糖尿病内科・統合医療医・漢方医。
福岡大学医学部卒業後、アイルランド、オーストラリアへ留学。
現在は、自身のクリニック:みやま市工藤内科で地域医療に力を注いでいる
専門は、糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病、漢方治療・ダイエット治療など多岐にわたる。
テレビ・ラジオなどのメディアでは、ジャンルを問わず様々な医療の最新情報を発信している。
NHK「ガッテン!」では、2018年度の最高視聴率を獲得した。
著書は15万部突破のベストセラー「やせる出汁」をはじめ、50冊以上に及ぶ。
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本肥満学会・日本東洋医学会・日本抗加齢医学会・日本女性医学学会・日本高血圧学会、日本甲状腺学会・日本遠隔医療学会・小児慢性疾病指定医。

 

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