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【医師監修】インフルエンザと唾液の関係とは?分泌を促すための方法を解説

2022.11.28| 感染症・消毒

人間には、ウイルスや細菌に感染しないようさまざまな防御機能が備わっています。

防御機能といえば、体内に入ってきた病原体を退治してくれる“免疫細胞”をイメージする方もいるのではないでしょうか。

ただ実際には、鼻や口といった病原体が入ってくる可能性のある入り口で、私たちの体を守ってくれている一次的な防御機能も多く存在しています。

今回はその1つである “唾液”と免疫力の関係についてみていきましょう。

唾液にはどのような働きがあるのか?

健康な成人では、1日に1リットル以上の唾液が分泌されています。この唾液の大部分(99%ほど)は水ですが、残りの1%に100種類以上ものさまざまな物質が含まれています。

主な目的は、消化管の入り口である口腔にて、食べ物を消化しやすいように水分を含ませることであり、重要な働きをしています。

そのほかにアミラーゼなどの消化酵素や、粘性のあるムチンにより口の中がすぐに乾いてしまわないようにするなど、多くの役割を担っています。

インフルエンザと唾液の関係

さらに唾液の中には、IgA抗体と呼ばれる物質が多く含まれており、病原体の入り口である口の中での防御機能に一役買っています。

ウイルスや細菌は口や鼻の粘膜から体内に侵入してきます。これを粘膜免疫によって感染を防いでくれているのです。

そのため「唾液力」を高めることが、インフルエンザなど風邪や病気の予防につながると考えられています。そのほかにも、アンチエイジング効果や歯周病予防にも期待できるとして研究がされています。

インフルエンザの予防として唾液の分泌を促そう

唾液の分泌を促すためには、以下の方法などがあります。

こまめに水分補給する

唾液のほとんどは水分で構成されています。水分不足は脱水を起こし、唾液の分泌量も減る傾向にあるため、普段からこまめに水分補給を行うことが大事です。

とくに夏場は汗による水分不足に、冬場は乾燥による水分不足に注意してください。

また、一度に大量の水分を摂っても尿として排出されてしまうため、少しずつ水分補給するようにしましょう。

食事を工夫する

普段の食事を工夫することで、唾液力が高まると言われています。唾液は食べ物の消化に重要な役割を持っているため、食べ物が口の中に入ってきたり、それを小さくするために咀嚼回数が増えたりすると唾液の分泌を促すことになります。

たとえば、繊維質の多い噛み応えのある食材を摂取したり、食材をいつもより大きく切ったり、水分の少ないメニューを選んで食べたりすると自然に咀嚼回数が増えるため、これらは普段の食事から簡単に実践できそうな工夫かもしれません。

また、すぐにお茶で流し込まないようにすることも唾液の分泌に重要です。食事以外に、普段からのど飴をなめたりすることも有効と言われています。

鼻呼吸を意識する

口呼吸は口の中が乾いてしまうため、鼻呼吸を意識しましょう。口呼吸は細菌やウイルスなど、病原体が体内に流れ込む要因の1つだとも言われています。

また、アレルギーで鼻がつまっているなど元々鼻が悪いと、口呼吸になりやすいこともあります。現代は口呼吸をする人が増えているとも言われています。少し意識してみることも有効な手段となりえるかもしれません。

ストレスをためない

人は運動中など活動的な時には、唾液を必要とすることも少ないため分泌量も相対的に少なくなっています。

私たちの体は交感神経・副交感神経がバランスをとり、いま体にとって必要な機能が何なのかを自然と調整してくれています。活動的な時には交感神経が、逆に休息中などは副交感神経が優位な状態です。

緊張やストレスは、交感神経が強く刺激されてしまう要因として知られています。ストレス性ドライマウスと言われる方も少なくなく、ストレスは交感神経を刺激し、少量の粘々とした唾液となってしまうのです。

マッサージを取り入れる

唾液は、耳下腺、顎下腺、舌下腺の3か所の唾液腺から分泌されています。

優しい力でマッサージすることで、唾液腺を刺激することもできます。指全体で両耳の前、上の奥歯あたりや、顎の骨に沿って顎の下あたりまでをゆっくりと押してあげると良いでしょう。

唾液力を高めてインフルエンザを予防しよう

唾液にはインフルエンザなど病原体から私たちを守ってくれる働きがあります。それ以外にも、規則正しい生活やアルコール手指消毒など日ごろからしっかりと感染対策を心掛け、インフルエンザを予防していきましょう。

これまであまり意識していなかった方も、日々の生活の中で唾液力を意識してみると生活が変わるかもしれません。ぜひ実践してみてください。

佐藤医師よりコメント

唾液には、インフルエンザウイルスや細菌など感染の元になる病原体を私たちの体内へ侵入しないようにする防御機能があります。日頃から唾液力を高めることを意識して、アルコ-ル手指消毒なども心がけて感染対策をしていきましょう。

監修者

医師:佐藤留美

内科医・呼吸器科医・感染症科医・アレルギー科医。 久留米大学医学部を卒業後、大学病院、市中病院で臨床医として勤務。また、大学院で感染症の 研鑽を積み、医学博士を取得。内科・呼吸器・感染症・アレルギー等の専門医と指導医資格を多岐にわたり取得。現在は朝倉医師会病院呼吸器科部長として勤務。

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