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【医師監修】インフルエンザの予防接種は受けるべき?副反応や腫れた場合の対処法も解説

2022.11.28| 感染症・消毒

■ワクチンは実物ではありませんのでイメージフォトとしてご利用ください。
■ワクチンは実物ではありませんのでイメージフォトとしてご利用ください。

インフルエンザはさまざまな予防方法がありますが、インフルエンザワクチンを接種しようとしている方も多いのではないでしょうか。

しかしながら、インフルエンザワクチンによる副反応が心配だったり、予防接種の効果がいまいちわからなかったりする方も多いのが現状です。

そこで今回は、「インフルエンザワクチンの効果」や「副反応」について詳しく紹介します。インフルエンザワクチンを接種するかどうか悩んでいる方は、ぜひ以下の情報を参考に検討してください。

インフルエンザの予防接種は本当に効果がある?

まず第一に、インフルエンザワクチンの大きな効果は「ウイルス感染による重症化」を予防することです。発病させない効果も期待できますが、予防接種を行っても、インフルエンザを完全に予防することはできません。

インフルエンザに感染しても多くの方は、適切な治療を行えば1週間程度で回復できますが、なかには肺炎や脳症を起こすなど重症化してしまう方もいます。

基礎疾患をお持ち方や高齢者、妊娠中の方などはインフルエンザ感染によるリスクが懸念されているため、重症化が心配な方はインフルエンザワクチンを接種しておくとよいでしょう。

インフルエンザワクチンはいつ打てば良いのか

インフルエンザは毎年12~4月の期間に流行する傾向にあります。インフルエンザワクチンを検討している方は、流行時期前には接種を済ませておくとよいでしょう。

インフルエンザの流行のピークは1~3月上旬頃のため、12月中旬までにはワクチン接種を終えておくのが理想的です。

13歳未満の子どものワクチン接種は、原則2回となっています。1回目のワクチン接種から3~4週間ほど間隔を取る必要があるため、12月中旬までにワクチン接種を終えるためには11月頃から予防接種をはじめるとよいでしょう。

生後1年までの乳幼児も、インフルエンザワクチンは2回接種するのが望ましいです。ただし、乳幼児は免疫の働きが十分ではないため、抗体ができにくい傾向にあります。予防接種だけに頼らず、インフルエンザに感染しない生活を意識することが大切です。

大人の場合、インフルエンザワクチンの接種は原則1回です。高齢者も同じくワクチン接種は1回となりますが、インフルエンザ感染による重症化が心配な場合は、10月と11月に、合わせて2回ワクチンを接種する場合があります。

インフルエンザの予防接種で現れる副反応とは?

インフルエンザの予防接種は、感染力がなくなるように処理された微量のウイルスを体内に入れることによって、体の中にある程度の抗体ができることを期待しているものです。

しかし、予期していた抗体づくりとは異なる、不都合な別の反応が出てしまうことがあり、それらはまとめて「副反応」と呼ばれます。比較的多く見られる副反応には、注射した部位周辺に現れる局所的な症状と、身体全体に現れる全身症状があります。

<よくある局所的な症状>…予防接種を受けた人の約10~20%に現れます。

・注射した部位の皮膚が赤くなる

・注射した部位の皮膚が腫れる

・注射した部位の皮膚がかたくなって、しこりのようになる

・注射した部位の皮膚が痛くなる

<よくある全身症状>…予防接種を受けた人の約5~10%に現れます。

・熱が出る(ほとんどの場合は微熱。子どもは高熱になることも)

・体がだるくなる

・頭痛がする

インフルエンザの予防接種により副反応が起こる原因

弱体化させた感染力のない微量のウイルスから作るインフルエンザのワクチンは、人の体にとっては異物です。こうした異物が体内に入ると、体は免疫システムを働かせてそのウイルスに対抗できる抗体を作ろうとします。これが本来の予防接種の目的です。

しかし、抗体を作るためには白血球が集結して活発に働くため、ワクチンを接種した部分が熱を持ったり、腫れたりすることが起こります。この白血球の働きによって引き起こされる症状が副反応であり、これは接種されたワクチンに対して、体が正常に反応した証拠と考えられます。

また、通常のインフルエンザワクチンにはチメロサールという防腐剤が使用されており、人によってはこのチメロサールの成分に対して過敏症であるという場合があり、成分に反応して腫れなどの症状が出ることもあります。

インフルエンザの予防接種で腫れる人がいるのはなぜ?

インフルエンザの予防接種をしても、全く接種した箇所が腫れない人もいれば、逆に大きく腫れてしまう人もいます。また、同じ人でも接種を受けた年によって大きく腫れる年もあれば、全く腫れない年もあります。

ワクチンを接種した箇所が腫れる人と腫れない人の違いは、以下の2つの要因が考えられるでしょう。

皮下注射であること

また、注射をする際には皮下注射をする場合と、筋肉注射をする場合がありますが、日本でのインフルエンザの予防接種は、皮下注射をします。筋肉注射に比べておだやかに作用するといわれる皮下注射ですが、注射した箇所にしばらくワクチンが留まるため、その場所が腫れたり赤くなったりしやすくなります。

特に、ワクチンに対して反応が激しく出る人の場合、より強い痛みや腫れが症状として出る場合があります。

何らかのアレルギーや過敏症があるかどうか

前述したチメロサールの成分に対する過敏症がある人や、ワクチン製造過程で使用する卵に対するアレルギーがある人の場合は、そうでない人に比べて腫れやすい傾向が見られます。

アレルギーや過敏症がない方でも、ワクチンを接種した箇所が炎症を起こすケースも考えられます。インフルエンザワクチンは不活化した病原体を体に取り込むことで免疫を作るものです。

ワクチン接種後は異物が入っている状態のため、局所的な炎症を起こしても不思議ではありません。接種箇所の腫れは決して珍しい症状ではありませんので、過剰に不安を抱かないことも大切です。

インフルエンザの予防接種後に腫れや痛みが出た時の対処法

インフルエンザの予防接種後に、接種箇所が腫れた場合の対処法について紹介します。注意点も参考にしながら、症状が現れた際は適切な方法で対処しましょう。

腫れた部位を冷やす

接種した周辺が赤く腫れる症状の場合、冷やしたタオルやアイスノンなどで患部を冷やしましょう。2~3日で症状が治まるので、ほとんどのケースで特に心配はいりません。

やってはいけないこと

接種した箇所をひっかいたり、硬くなった箇所をもみほぐしたりたたいたりすると、症状を悪化させてしまうので絶対にやめましょう。

また、インフルエンザワクチンの接種後は、患部が炎症を起こしている状態のため、激しい運動や飲酒、長時間の入浴は炎症を悪化させる恐れがあります。患部が腫れている場合は、炎症を悪化させるような行為は控えてください。

インフルエンザワクチンを接種した箇所は、傷口になっています。お風呂に入ることで傷口の炎症を悪化させるケースもあるため、腫れや痛みが気になる時は入浴をシャワー程度に留めましょう。

いつもと違う!? こんな症状が出たときは迷わず病院へ!

インフルエンザワクチンによる副反応が気になる場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。以下のような症状が見られる方は、ただちに医師に相談してください。

腫れている部位が大きい、痛みが強い場合には…

腫れている部位が腕全体に広がって次第に大きくなってきた、痛みが我慢できないほど強くなってきた…などの症状が見られる場合には、医療的な対処が必要なケースもあります。数日たっても症状がおさまらない時には医療機関への受診が必要です。

接種後すぐに現れる「アナフィラキシーショック」

非常にまれな副反応としては、「アナフィラキシーショック」があります。じんましんや湿疹や痒みが一気に広がる、高熱が出る、けいれんがおこる、腹痛や下痢や嘔吐、呼吸困難、手足のしびれなどの症状が出たら、ただちに診療してもらうことが必要です。

接種直後から30分後くらいまでの時間に突然症状が現れることが多いため、万が一の場合に備えて、予防接種後30分は病院内で静かに様子を見るか、いつでも病院に連絡の付く場所で待機しておくのがおすすめです。

手足のしびれや筋力の低下も危険信号

同じくまれな副反応としては、予防接種後しばらくしてから手足のしびれや麻痺、筋力の低下などが見られる「ギラン・バレー症候群」を発症することもあります。

手足に力がはいらない、歩くとつまずく、階段が登れない、食べ物や飲み物が飲みこみにくい、うまく物をつかめない、呼吸が苦しいなどの症状が特徴で、接種してから数週間後に症状が出ることもあるため、なかなか予防接種との関連性に気が付かないこともあります。

症状が急速に悪化するという特徴もあり、早めの治療が回復の鍵です。万が一いつもと違う症状が出たら、すぐに病院に行き、インフルエンザの予防接種をしていることも伝えるようにしてください。

まとめ

インフルエンザワクチンは、ウイルス感染による重症化を防ぐ効果に期待ができます。基礎疾患をお持ちの方や感染リスクが心配な方は、インフルエンザが流行のピークを迎えるまでにワクチン接種を済ませておきましょう。

副反応が気になる方は、事前に医療機関へ相談しましょう。万が一、ワクチン接種後に気になる症状が見られる場合は、ワクチンを接種した医療機関を受診してください。

また、インフルエンザワクチンのほかにも予防を行うことも大切です。手洗いを徹底したり、手指消毒を行ったりしながらウイルスが体内に入らないよう予防対策を行いましょう。

手指消毒はアルコール消毒薬を使いますが、便利な携帯用も販売されているため、出先でも気軽に手指消毒ができるようにぜひ活用してみてください。

佐藤医師よりコメント

インフルエンザワクチンは、感染予防とインフルエンザに感染した場合の重症化を防ぐ効果があります。予防接種後に副反応が起きる場合もありますので、気になる症状が見られた際は医療機関を受診されてください。ワクチンだけではなく、普段からの感染対策も大切です。手指衛生を心がけるようにしていきましょう。

監修者

医師:佐藤留美

内科医・呼吸器科医・感染症科医・アレルギー科医。 久留米大学医学部を卒業後、大学病院、市中病院で臨床医として勤務。また、大学院で感染症の 研鑽を積み、医学博士を取得。内科・呼吸器・感染症・アレルギー等の専門医と指導医資格を多岐にわたり取得。現在は朝倉医師会病院呼吸器科部長として勤務。

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