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【医師監修】インフルエンザが減少している理由はコロナ禍?ウイルス感染を防ぐ方法

2022.11.28| 感染症・消毒

インフルエンザは主に冬の時期になると流行する感染症ですが、コロナ禍になった現代は感染の傾向に変化が見られています。

長引くコロナ禍において、今後のインフルエンザの感染状況はどのように変化していくのでしょうか。

今回は、インフルエンザが減少した理由を解析しながら、2021年冬~2022年春シーズンの流行を予想します。インフルエンザを予防して健康的な生活を送りたい方は、ぜひ参考にしてください。

2020年冬シーズンのインフルエンザ感染者数は大幅に減少した

インフルエンザとは、毎年流行するウイルスによる気道感染症の1つです。一般的な風邪と比べて症状が重くなりやすいことから、多くの方が感染予防に取り組んでいることでしょう。

日本では、11月下旬から12月中旬頃よりインフルエンザの流行がはじまり、1~3月に流行のピークを迎えます。

しかし、2020年冬~2021年春のシーズンは、日本におけるインフルエンザ感染者数が大幅に減少しました。

2019年第36週以降~ 2020年第14週のインフルエンザの推計受診者数は、国内推定約728.5万人だったのに対し、2020年第36週以降~2021年第9週は国内推定約1.4万人となっています。

世界でも感染者数は減少傾向にある

厚生労働省が発行した2021年2月23日の資料によると、2021年2月21日の時点で、世界のインフルエンザ新規感染者数は6週連続で減少しました。

直近1週間の新規感染者数は、感染者数の多い国でも減少傾向となり、前の週と比較した結果、アメリカでは29%、ブラジルは1%、ロシア連邦では11%も減っています。

なかには、フランスの3%増加、インドの10%増加のように、前の週より新規感染者数が増えた国もありますが、世界全体的には11%の減少となりました。

2020年冬~2021年春シーズンに関して、日本だけではなく、世界でもインフルエンザの感染が減少傾向にあったことがわかります。

インフルエンザ感染者数が減少した理由

インフルエンザの感染が減少した理由の1つに、新型コロナウイルスの流行が挙げられます。コロナ禍により感染症対策が徹底されたほか、生活様式に変化が起きたことがインフルエンザの感染減少につながったと考えられています。

新型コロナウイルスの感染を防ぐため、ほとんどの方がマスクの着用をし、あらゆるシーンで手指消毒を行うようになりました。国内外の移動を控えたり、ソーシャルディスタンスを意識したりと、人と人との接触が少なくなったこともインフルエンザの流行を抑えた要因となったのでしょう。

2021年冬シーズンのインフルエンザの流行はどうなるか?

コロナ禍となって以降、世界的に見てもインフルエンザの新規感染者数は減少傾向にありますが、ここで気になるのは2021年冬~2022年春の流行シーズンにおける感染傾向です。

2021年冬~2022年春シーズンにおけるインフルエンザの流行を、日本とは反対側にある南半球の動向を参考にして予想しましょう。

南半球にあるオーストラリアの流行報告をみると、インフルエンザの感染者数は減少傾向にあります。南半球の動向から、日本を含めた北半球もインフルエンザの感染者数は例年に比べて減少すると予想が立てられます。

ただし、亜熱帯地域であるアジアにおいては流行の傾向が異なる可能性もあるため注意しましょう。

イギリス政府では、昨年インフルエンザの流行が減少したことから、今年は1.5倍ほどの流行が訪れる可能性を懸念しています。同じ北半球でも地域の気候や性質、生活スタイルによってインフルエンザの流行動向は異なるため、南半球の動向はあくまでも参考程度に留めてください。

現在は、新型コロナウイルスの関係で国境を越えた人の移動が少ない傾向にありますが、出入国の手続きが緩和され人流が増えると、インフルエンザも再び世界規模で流行する恐れがあります。

インフルエンザの流行を抑えるためにも、2021年も引き続きワクチンの積極的な接種が推奨されているため、接種を希望する方は近隣病院の受付情報などを調べましょう。

インフルエンザを予防する5つの方法

2020年冬~2021年春シーズン、インフルエンザの流行は減少傾向にあったものの、感染を防ぐためには対策をしっかり行うことが大切です。インフルエンザの予防方法5つを紹介するので、感染症対策の参考にしてください。

手洗いや手指消毒を入念に行う

インフルエンザの流行時期には、手や顔、衣服などにウイルスが付着する可能性があります。トイレ後や外出先から帰宅した際には、きちんと手洗いうがいを行ってください。

手洗いは適当に洗い流すのではなく、丁寧に行うことが大切です。流水でしっかり手を濡らし、石けんで手の甲や指先、指間、爪の間、手首まで丁寧に洗いましょう。親指や手首は、ねじるように洗うのがポイントです。

また、アルコールを含んだ消毒薬を活用することをおすすめします。アルコール消毒薬は、手洗い場がない場所でも使用できるうえに乾燥が早いことから、手指を清潔に保つための時間も節約できます。

室内の湿度を管理する

空気が乾燥すると、気道粘膜の防御機能が低下してインフルエンザウイルスにかかりやすくなります。インフルエンザ対策のためにも、普段から室内の湿度コントロールを心がけましょう。

理想的な湿度は、50~60%が目安です。加湿器や濡らしたタオルなどを活用しながら、空気の乾燥を防いでください。

健康管理に努める

インフルエンザに感染しないためにも、普段から免疫力を高めるように努めることをおすすめします。バランスの良い食事を摂り、十分な睡眠時間を確保するなど、健康的な生活を意識しましょう。

生活が不規則な方は、規則正しい生活を心がけることも大切です。とくにインフルエンザの流行シーズンは年末年始を挟むことから、生活リズムが乱れやすくなるため注意してください。

人混みを避ける

インフルエンザの流行時期は、できる限り人混みを避けましょう。人がよく集まる場所にはウイルスが多く存在するため、インフルエンザに感染しやすい傾向にあります。

どうしても外出を避けられないのであれば、電車や飲食店のような人が集まりやすい場所は、混雑する時間帯を避けて訪れるといった工夫も必要です。外出先でも手洗いや手指消毒を行い、インフルエンザを予防しましょう。

インフルエンザワクチンを接種する

インフルエンザワクチンを接種することも予防対策に役立ちます。インフルエンザワクチンは必ずしも感染を防ぐものではありませんが、ウイルスに感染しても重症化を防ぐ効果が期待できます。

予防接種は、インフルエンザの流行時期を迎える前である11月~12月中旬までに済ませておくことが望ましいです。年齢によってワクチンの接種回数は異なるため、流行シーズンまでに接種を済ませたい方は、事前に自分に必要な回数を確認してください。

インフルエンザとコロナウイルスの感染対策を徹底して健康に過ごそう!

新型コロナウイルスの感染対策が徹底されたこともあり、インフルエンザの感染者数は世界的に見ても減少傾向にあります。

ただし、人の動きが活発になる、感染症対策が緩和されるなど、社会生活に変化が起きることで、再びインフルエンザが流行する可能性はあります。

インフルエンザに感染したあとで後悔しないためにも、感染者数が少ない時期からしっかり感染対策を行いましょう。健康的な生活を心がけ、手洗いや手指消毒を行いながらインフルエンザにかからないよう努めてください。

佐藤医師よりコメント

コロナ禍となり、2020年冬シーズンにおいては、インフルエンザ感染者数は大幅に減少しました。しかし、2021年冬シーズンはインフルエンザ感染者数が増える可能性があるため、 感染しないように、しっかり感染対策を行っていきましょう。

監修者

医師:佐藤留美

内科医・呼吸器科医・感染症科医・アレルギー科医。 久留米大学医学部を卒業後、大学病院、市中病院で臨床医として勤務。また、大学院で感染症の 研鑽を積み、医学博士を取得。内科・呼吸器・感染症・アレルギー等の専門医と指導医資格を多岐にわたり取得。現在は朝倉医師会病院呼吸器科部長として勤務。

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