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【医師監修】インフルエンザで入院する可能性はある?重症化しやすい人の特徴も解説

2022.11.28| 感染症・消毒

インフルエンザにかかると、高熱、筋肉痛や関節痛などに見舞われますが、治療薬の服用や自宅療養により数日で軽快に至るケースがほとんどです。

しかし、なかには入院が必要になるほど状態が悪化し、いわゆる重症化することが稀に起こります。

今回は、インフルエンザで入院するのはどのような場合なのか、そして重症化してしまう人の特徴を解説します。

インフルエンザの種類と特徴

インフルエンザとは、インフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症のことです。

日本では、外気温が低くなる12月頃から流行し始め、翌年1月下旬~2月上旬頃に流行のピークを迎えます。そして、4月頃になると罹患者数が落ち着くというのが例年の傾向です。

インフルエンザが流行しやすい要因のひとつとして、インフルエンザウイルスの潜伏期間があります。潜伏期間とは、ウイルスが体内に入り込んで感染が起こってから、発病するまでの期間で、個人差はあるものの、1~4日程度と言われています。

この期間にウイルスはヒトの細胞のなかで増殖するのですが、厄介なことに、この潜伏期間でもウイルスは感染力をもっているため、知らず知らずのうちに感染を広げてしまうことがあります。

まず、日本で主に流行するインフルエンザのA型とB型の特徴と症状を把握しておきましょう。

A型の特徴

A型インフルエンザは季節性のインフルエンザで、毎年流行する一般的なインフルエンザウイルスです。

主な症状は、38度を超える突然の高熱、強い悪寒、頭痛、関節の痛み、筋肉痛、全身の倦怠感などがあります。

症状が出た後に、咳や鼻水などの呼吸器症状が現れることもあり、発病からおおむね数日~1週間程度で症状は治まってくるケースがほとんどです。

B型の特徴

B型インフルエンザは、A型よりも少し流行時期が遅く、冬の後半から春先にかけて流行します。

A型の場合と同じような高熱や頭痛、関節の痛みなどが現れることが多いのですが、高熱が出ないケースもあるほか、A型に比べると腹痛や下痢などの消化器症状が現れる傾向にあります。

インフルエンザは重症化すると入院になることがある

インフルエンザでは上述の症状が出現し、そのほとんどは治療薬の服用や自宅での療養で軽快します。

しかし、なかには肺炎や脳症などの重い合併症を併発することがあり、これがインフルエンザの「重症化」です。

この重症化によって、治療のために入院が必要になってくるケースがあります。とくに
基礎疾患がある方では、もともとの疾患自体が悪化して、入院を余儀なくされるケースもあるため、インフルエンザを侮ってはいけません。

最も注意すべき合併症は肺炎です。肺炎が誘発される原因は、インフルエンザによる炎症で気道粘膜が傷つき、防御機能が低下することで、肺炎球菌などの常在菌が肺に感染してしまいます。

そして1~5歳の幼児に多いのがインフルエンザ脳症です。この詳しいメカニズムはわかっていませんが、過剰な免疫反応が原因で起こると考えられています。

主な症状はけいれん、意識障害、異常行動です。親御さんはお子さんにこうした症状がみられた場合は、速やかに医療機関を受診するようにしましょう。

国立感染症研究所が公表している資料によると、全国約500か所の基幹定点医療機関より報告されたインフルエンザによる入院患者は年間1~2万人ほどです(2017/18シーズンから2019/20シーズン)。

インフルエンザの推定罹患者は毎年1000万人ほどなので、入院する方の割合は高くありません。しかし、インフルエンザが重症化して入院を余儀なくされる方がこのなかに一定数存在します。

続いて、インフルエンザが重症化しやすいのはどのような方か以下で紹介します。

高齢者や乳幼児、妊婦

高齢者は体力や免疫力が低下傾向にあり、重症化のリスクが高いと考えられています。そのため、65歳以上の高齢者ではインフルエンザワクチンが定期接種の対象となっています。

ワクチン接種によって重症化をある程度予防できることから、医師とよく相談したうえで予防接種を受けるか否かを判断すると良いでしょう。

乳幼児は免疫機能が未発達ですので、高齢者と同様に重症化のリスクが高いと言えます。

また、妊婦では母体の免疫系統がお腹の胎児を異物とみなして攻撃しないように、免疫力を落とすため、こちらも注意が必要です。

乳幼児や妊婦は健康状態を踏まえて、医師に相談してからワクチンを接種すると良いでしょう。

慢性呼吸器疾患がある方

慢性呼吸器疾患がある方は重症化しやすいと言われています。とくに、喘息や慢性閉塞性肺疾患の方が多い傾向があります。

もともと肺に炎症があったりダメージがあったりするため、呼吸器系のバリア能が低下することによる二次的な細菌感染が起こり、持病が悪化しやすいと言われています。

慢性心疾患がある方

心不全や虚血性心疾患などの慢性的な心疾患がある高齢者、先天的な心疾患をもつ乳幼児も重症化しやすいと言われています。

心臓の機能が低下していると、うまく血液循環ができない状態で、酸素の運搬が落ちています。

また、肺炎で肺から血液中に酸素が取り込めなくなると、体内の細胞で酸素が不足するため、心臓への負担が増え、持病が悪化する恐れがあります。

糖尿病などの代謝性疾患がある方

血糖値が高いと、白血球の働きが低下し、免疫反応が弱まるため、糖尿病の方は重症化しやすいと考えられています。

そのため、糖尿病で合併症を引き起こしている場合は、インフルエンザが治りにくかったり、肺炎などを併発しやすかったりなど重症化するリスクが高くなる可能性があります。

また、感染時に起こる体の反応でストレスホルモンなどが増加し、血糖コントロールが難しくなることもあるので、注意しましょう。

腎機能障害がある方

腎機能障害がある方も重症化しやすいため注意が必要です。

とくに、透析を行っている方では、食事制限などで栄養状態が悪いと抵抗力が低下し、免疫をつかさどる白血球機能の低下を招きやすいと考えられています。

免疫を抑える薬を服用している方

ステロイド内服薬や免疫抑制薬を服用している方は、免疫機能が低下する傾向があるため、細菌感染やウイルス感染を起こしやすく、重症化のリスクがあります。

インフルエンザで入院した場合の入院期間は?

インフルエンザによる入院期間は、年齢層や患者背景、重症化の度合いによって異なるため、一概に言い切れません。

ある年の小児インフルエンザの入院事例では、入院期間の平均値が早ければ2日程度、長期化すると6日程度との報告がありました。

インフルエンザにより肺炎や脳症などの合併症を引き起こすことにより、入院期間が長期化することもあります。

重症化を避けるためにも、インフルエンザの可能性がある場合は、症状が出始めてから12時間以上、48時間以内に医療機関を受診しましょう。

入院しないためにもインフルエンザを予防しよう

日頃の体調管理やワクチンの接種で、インフルエンザの発症や重症化をある程度予防ができます。

また、自分で行う感染対策が周囲の家族をインフルエンザや重症化から守ることにもなるため、日々の生活で感染対策を意識するようにしましょう。

ワクチンを接種することは、インフルエンザの重症化を防いだり、入院を回避したりするための基本的な対策のひとつで、高齢者や基礎疾患がある方には厚生労働省もワクチン接種を推奨しています。

また、重症化するリスクの高い方をインフルエンザから守るために、周りの家族もワクチンは接種しておくと良いでしょう。

このようにインフルエンザの感染様式と対策のコツを知っておくことで、感染リスクを低減することができます。「接触感染」と「飛沫感染」の対策は必ずチェックしておきましょう。

「接触感染」は手指がウイルスの運び屋になります。手で目や鼻をこすったり、口をさわったりしたときにウイルス感染は発症しやすくなるため、こまめな手洗いと、アルコールによる手指の消毒は欠かさず行いましょう。

「飛沫感染」は感染者から発せられるウイルスを含む飛沫が、鼻や目の粘膜についてしまうことで感染します。

人混みは飛沫感染のリスクが高いため、インフルエンザの流行時期は大勢の人が集まる場所を避けるようにしましょう。

また別の感染症対策として、室内は湿度50~60%を目安に加湿し、ウイルスにとって苦手な環境を作り、日頃から栄養の偏りがない食事や十分な睡眠を心がけるなど体調を整える意識をしましょう。

インフルエンザは重症化すると入院する可能性がある

インフルエンザは重症化すると、治療のために入院が必要になる場合があります。

とくに、慢性呼吸器疾患をもっている方、高齢者など、重症化のリスクが高い方は注意が必要ですので、インフルエンザの疑いがある場合は、医療機関を受診しましょう。

また、重症化をある程度予防できるワクチン接種や、手指をアルコール消毒するなどのインフルエンザにかかるリスクを下げる行動が重要です。

重症化しやすい方だけでなく、周囲の方も感染対策をしっかり行うようにしましょう。

佐藤医師よりコメント

インフルエンザを発症すると、通常は数日間で症状軽快しますが、中には重症化し入院治療が必要になる場合もあります。とくに、乳幼児、妊婦、また高齢者や基礎疾患を持っている方は重症化のリスクが高いため、インフルエンザを疑った場合は早めに医療機関を受診しましょう。

監修者

医師:佐藤留美

内科医・呼吸器科医・感染症科医・アレルギー科医。 久留米大学医学部を卒業後、大学病院、市中病院で臨床医として勤務。また、大学院で感染症の 研鑽を積み、医学博士を取得。内科・呼吸器・感染症・アレルギー等の専門医と指導医資格を多岐にわたり取得。現在は朝倉医師会病院呼吸器科部長として勤務。

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