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食中毒の症状は?感染に注意したい食べ物や予防方法を紹介

2023.01.31| 感染症・消毒

楽しい食事のひとときも、その後に下痢や嘔吐で苦しい思いをしては台無しですよね。

食中毒には様々な原因があり、その症状も下痢や嘔吐ばかりではありません。今回は、食中毒の原因や症状を詳しく解説するとともに、食中毒に注意したい食べ物や食中毒の予防方法も紹介します。

食中毒とは?

食中毒とは、細菌やウイルス、寄生虫、有毒物質が付着した食べ物を食すことで起こる健康被害を指します。

厚生労働省では毎年の食中毒統計資料を公開しており、月別や病因別の発生状況を知ることができます。

統計年によって変動はみられるものの、6~9月は概して細菌による食中毒の発生が多い傾向にあります。理由としては、その時期は気温や湿度が高く、細菌が繁殖しやすい条件が揃っているためといわれています。

食中毒の主な原因菌は大腸菌、ウエルシュ菌、サルモネラ菌、ブドウ球菌などで、それらの細菌が食べ物のなかで増殖し、その増殖の際に産生された毒素が、食事によって腸管に取り込まれて悪さをするのが、食中毒の原因であると考えられています。

昨今ではテイクアウトを利用する機会が増え、出来上がりの食べ物をその場ですぐに食べずに持ち帰ることが多いでしょう。

夏場の高温多湿下で食べ物を持ち歩くと、食べ物に付着している微生物が増殖してしまいます。そのため、知らず知らずのうちに微生物の増殖と毒素が産生された食べ物を食べてしまい、食中毒に見舞われる場合があるのです。

ウイルスによる食中毒は、冬場に多い傾向にあります。その原因の代表格がノロウイルスです。このウイルスを含んだ食べ物が原因となるだけでなく、ウイルスに感染した調理者を介して感染が広がったり、あるいは感染者が利用したトイレなどから感染が広がったりします。そのため、ノロウイルスは集団感染を起こしやすい危険な食中毒といえます。

最近ではアニサキスという寄生虫も食中毒の原因として注目されています。その幼虫が付着している刺身などの生鮮魚介類を食べると激しい腹痛が起こるので、アニサキスが紛れ込んでいないか注意するようにしましょう。

食中毒の原因となる微生物を食べてしまった場合、食中毒に必ずかかるわけではありません。胃酸という強力な消化液で多くの微生物は死んでしまい、人間の免疫力によって発症しないこともあります。

しかし、夏バテや風邪をひくなどで体調が優れないときには抵抗力が落ちているため、食中毒の症状が出やすくなることもあります。

食中毒の症状

食中毒の主な症状は、腹痛や下痢、嘔吐などの消化器症状ですが、発熱などがみられることもあります。

食中毒の種類や原因によって症状もさまざまで、主な原因微生物や原因食品で見られる代表的な症状を下表で紹介しますので、参考にしてみてください。

主な食中毒の症状

食中毒の症状は、安静にしていれば数日で軽快するような軽症なものが多いのですが、高齢者や乳幼児ではまれに重症化するケースがあります。その一例が、腸管出血性大腸菌が原因となる食中毒です。

例年の発生頻度は10-30件ほどですが、大腸内で菌が増殖して毒素を産生し、体のなかで様々な障害を引き起こします。場合によっては重症化して死に至る可能性もありますので注意が必要な食中毒といえます。

食中毒に注意したい食べ物

食中毒は食べ物を介して起こります。ここからは食中毒に気をつけたい食べ物を紹介していきます。

貝類(二枚貝)

二枚貝は食中毒の原因になるものが貝の身の内部に潜んでいる可能性があります。その理由として、毒素をもった植物プランクトンを介して二枚貝に濃縮されたり、海中に放出された食中毒ウイルスが二枚貝のなかに蓄積されたりするためと考えられています。

ウイルス由来の食中毒対策としては、貝の身をしっかりと加熱することです。加熱をしっかりすればウイルスは死んでしまい、食中毒を防げることが多いため、生で食べるのではできるだけ避け、しっかりと熱を通してから食べるようにしましょう。

また、二枚貝を触った後はしっかりと手洗いをすることが大切です。二枚貝を扱った調理器具もその都度、洗浄や消毒をしてください。

加熱されていないお肉

十分に加熱されていないお肉や生肉は、あらゆる種類の食中毒の危険があります。なぜなら、お肉として解体加工される過程で細菌などが付着してしまったり、家畜が寄生虫に感染していたりするためです。

しかし、お肉に付着している細菌やウイルスは熱に弱い傾向があるため、しっかり加熱してから食べるようにすると良いでしょう。例えばお肉料理では、内部に赤みが残っていないかを確認して食べるようにしましょう。

生肉や加熱不十分なお肉を食べて体調不良を起こしている方は、食中毒も疑ってみるようにしましょう。

刺身や生卵などの生もの

生ものと呼ばれる刺身や生卵などは食中毒に注意が必要です。生で食べる際は細菌やウイルスの増殖を防ぐためにも、調理後はすぐに食べるようにしましょう。

すぐに食べない生ものは冷蔵庫に入れるなどして適切に保存してください。ただし、冷蔵庫という低温下に保存すれば微生物の増殖が止まるわけではありません。増えるスピードが遅くなるだけなので、調理物を冷蔵庫に保存しても、その日のうちには食べ切るようにしましょう。

人の手で作ったおにぎりやサンドイッチなど

人間の皮膚に付着している菌が食べ物に付着することでも食中毒が引き起こされる場合があります。この主な原因菌はブドウ球菌です。

ブドウ球菌が食べ物に付着して増殖すると、そこで毒素を産生するため、食べ物とともに取り込まれて毒素による食中毒が起こるケースがあります。

そのため、手が直接触れて調理される食べ物、例えば、おにぎりやサンドイッチ、握り寿司などでは、ブドウ球菌による食中毒に注意しておきましょう。

食中毒の症状が出たときにやってはいけないこと

嘔吐や下痢は食中毒で見られる主な症状です。嘔吐や下痢の症状は原因菌や毒素をカラダから排出しようとする自然な反応です。

そのため、嘔吐や下痢などの症状があっても、数日間安静にしておけば症状が軽快してくることがほとんどです。

こうした症状が出ると辛いため、市販の吐き気や下痢を薬で止めようと考える方も多いかもしれません。

しかし、食中毒が疑わしい場合には、医師の診断なしに市販の下痢止めや吐き気止めを服用しないほうが良いのです。なぜなら、原因菌が体内に留まってしまる可能性があるためです。激しい嘔吐や下痢で苦しい方は、速やかに医療機関に相談することが大切です。

また、吐き気がするので口から何も摂る気にならないからといって、水分摂取を控えることも望ましくありません。 嘔吐や下痢では体から多くの水分が失われ、脱水状態になってしまう可能性があるからです。そのため、電解質を含む水分を無理なく摂取するように心がけましょう。

食中毒を予防する方法

細菌が原因となる食中毒の『予防3原則』を耳にしたことがあるでしょうか?それは、食中毒菌を「つけない」「増やさない」「やっつける」というものです。

ここからは、それらを実践するための方法を5つ紹介していきます。

消費期限をチェックする

消費期限が切れた食べ物は食中毒に注意が必要です。なぜなら、食中毒の原因菌が食べ物のなかで増えてしまっているかもしれないからです。

さて、この「消費期限」が意味することは、食品に表示された保存方法に従って未開封の食品を保存したとき、それが安全に食べられる期限を指します。

消費期限の表示がある食品は、腐りやすかったり、痛みやすかったりするものに表示されているのがほとんどです。そのため、消費期限をきちんと確認し、期限内に食べるようにしましょう。

また、封を一度でも開けたものは、消費期限に関係なく早めに食べてしまいましょう。これも微生物を「増やさない」前に消費することなのです。

消費期限に関係なく、食べ物が傷んでいると感じる場合は食べるのを控えるようにしましょう。

食品ごとの適切な保存方法を確認する

食品の保存状態が悪いと、細菌やウイルスが繁殖する可能性があるため、食品ごとに適切な保存方法を確認しましょう。食中毒の原因微生物を「増やさない」ためです。

細菌やウイルスが繁殖しやすい条件の1つに、適度な温度があります。人間が快適に思う温度帯は、微生物にとっても増殖しやすい条件となります。一方で、温度が低いと増殖のスピードは抑えられます。

スーパーなどで購入した食材は家やお店に持ち帰った際には、すぐに冷蔵庫などに入れるようにしましょう。また、調理前の食材は使用する直前まで、冷凍庫や冷蔵庫で保管しておくようにしましょう。

また、肉や魚から出る汁が冷蔵庫や冷凍庫に付着しないようにビニールで包むと良いでしょう。これは、汁のなかに潜んでいる微生物を他の食材に「つけない」ためのやり方です。

調理前や食事前は必ず手洗いをする

食中毒の原因菌を「つけない」ために、手洗いは欠かせません。なぜなら、手は色々なものを触り、色々なものが付着するからで、微生物だって例外ではありません。

目に見えないからといって微生物が付着していないわけではなく、手には目では見えていない色々な微生物が付着しています。

そこで、調理前や食事前には石けんを使って丁寧に洗い、十分量の流水でしっかりと微生物を洗い流すことが大切です。

石けん手洗いが容易にできなければ、手指専用のアルコール消毒も食中毒予防に有用です。調理前や食事前にアルコールで手指をこまめに消毒する習慣をつけておきましょう。

加熱が必要なものはしっかり火を通す

加熱調理が必要な食材は、食べる前にきちんと火を通すことが鉄則です。食中毒の原因となる微生物を「やっつける」ためです。

食中毒の原因となる微生物は75℃以上の温度を1分以上保つことで死滅することが多いといわれています。加えて、ノロウイルス対策には85℃以上で90秒以上の加熱を心がけましょう。

冷凍食品やサイズの大きい食材は中心部まで熱が通りにくくなる場合があるため、食べる前にきちんと中心部まで熱が伝わっているかを確認しましょう。

調理器具を清潔にする

調理器具は使用後にきちんと洗浄して、食中毒の原因微生物を除去することが大切です。予防3原則のうちの「つけない」「やっつける」がこれに当たります。

例えば、まな板や包丁は、食材の種類が変わるたびに十分に洗浄するようにし、定期的に調理器具を消毒しましょう。

消毒方法のひとつに「熱湯」「煮沸」による消毒があります。調理器具に付着した食中毒の原因菌を殺菌する効果が期待でき、器具を乾燥させれば残留性もなく安全な方法です。熱湯消毒の目安は80℃で5分以上ですので、十分な熱と時間をかけるようにしましょう。

塩素系の消毒剤を使用する方法もあります。上記の熱消毒が難しい場合に利用されますが、汚れによって消毒成分が失活しますので、事前に十分な洗浄をしておくことが必須となります。食器やまな板などの消毒に次亜塩素酸ナトリウム液を利用する場合には、0.02~0.05%の濃度に調製した液に10分以上浸けておくようにしましょう。

食中毒の症状が出た際は早めに医療機関を受診しよう

食中毒は微生物などが付着した食べ物を食べて起こる健康被害ですので、身近でも起こり得ることです。

下痢や嘔吐などの苦しい症状が出ることがありますが、市販の薬を服用するのが望ましくないケースもありますので、自己判断で対処しないようにしましょう。

今回ご紹介した原因食品によって食中毒の特徴的な症状が出た場合は、先ずは食中毒を疑い、医療機関を受診するようにしてください。

また、食中毒を予防する3原則はとても基本的なことです。具体的な方法としてお示しした手洗い・手指消毒や調理器具の消毒などは実践するよう心がけてください。

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