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【医師監修】冬場のエアコンの使用はインフルエンザの感染リスクを高める!? 適切な温度・湿度管理について

2022.11.28| 感染症・消毒

寒い冬を乗り切るために暖房は必須ですが、インフルエンザ対策を考えるなら、忘れてはいけないのがその際の適切な温度と湿度の管理です。今回は、インフルエンザ予防の観点から、エアコンを使用する際に気を付けたいポイントについてご紹介します。

インフルエンザの基本

●インフルエンザとは
インフルエンザとは、インフルエンザウイルスが原因で起こる気道感染症のこと。インフルエンザウイルスは、口や鼻、目の粘膜から体内に入ると、細胞に侵入して急激に増殖します。通常1、2日の潜伏期間を経て、発熱や頭痛、関節痛、全身の倦怠感などの症状が現れ、その後、咳や鼻水などがみられることが多いです。免疫力の低い子どもや高齢者の場合、肺炎や脳症などの合併症を起こすこともあるため注意が必要です。

●感染経路 
インフルエンザウイルスが体内に入る感染経路には、以下の3つがあります。

・飛沫感染
インフルエンザに感染している人が咳やくしゃみをした際、飛び散った唾液や鼻水にはインフルエンザウイルスが含まれています。この飛沫を吸い込むことで感染するのが飛沫感染です。飛沫は、感染者から約1.5メートルの範囲に飛び散る可能性があると考えられているため、感染者の近くで看病する場合などは注意が必要です。またインフルエンザが流行している季節は、インフルエンザウイルスを体内に持っている人が増えるので、人混みでは飛沫感染するリスクが高いと考えられます。

・接触感染
咳やくしゃみをする時に手で口を覆うと、インフルエンザウイルスが手につく可能性があります。その手で触れた場所を別の人が触ると、その人の手にもインフルエンザウイルスが付着してしまいます。そのウイルスが付いた手で、口や鼻、目を触ることで体内にウイルスが取り込まれ、感染することがあります。特に電車のつり革や、エスカレーターの手すり、ドアノブなど、不特定多数の人が触る場所には、インフルエンザウイルスが付着している可能性が高いため、注意が必要です。

・空気感染
感染力を持った状態で、空気中に漂っているインフルエンザウイルスを吸い込むことでも感染することがあります。特に室温が低く乾燥している部屋や、窓が閉め切られて換気が不十分な部屋は、インフルエンザウイルスが長時間感染力を保ちやすい環境であるため、空気感染が起こりやすいといえます。

インフルエンザウイルスが好む環境とは?

体温を測る女性

インフルエンザウイルスは、環境によってその生存率や感染力が変わります。たとえば、低温で乾燥した空間は、インフルエンザウイルスにとって活動しやすい環境です。感染力を保持しやすいため、感染リスクも高まると考えられます。逆に、高温多湿の環境においては、ウイルスの感染力が弱まるといわれています。
この性質から、気温が低く空気が乾燥しやすい冬場は、インフルエンザウイルスにとっては好環境であることが分かります。さらに冬はエアコンを使う機会が多いため、室内はより乾燥してしまいます。このことを踏まえると、エアコンを使う時にはいくつか注意が必要になりそうです。

インフルエンザの予防には、エアコンや加湿器による温度・湿度管理が大切

インフルエンザを予防するためには、インフルエンザウイルスが活動しにくい環境を作ることが重要です。エアコンを使用する際には、室内の空気が乾燥してしまわないように、加湿器を一緒に使用するのがオススメです。目安としては、室内の温度は20~25℃、湿度は50~60%程度に保つように心がけましょう。ただし加湿のしすぎはカビの発生につながるため、高湿度になりすぎないように注意してください。加湿器がない場合には、部屋に濡れタオルを干しておくことでも乾燥を防ぐことができます。また、時々窓を開けて、換気をすることも大切です。窓を閉め切った部屋では空気が循環されず、空気感染のリスクを高めてしまいます。1、2時間に1度を目安に、部屋の空気を入れ替えるようにしてください。マンションなどで24時間換気システムがある場合は、それを利用してもよいでしょう。

ほかにもやっておきたい、インフルエンザ予防法とは

手洗い

温度と湿度の管理のほかにも、インフルエンザの予防法には以下のようなものがあります。それぞれを組み合わせて、総合的に予防に努めましょう。

●インフルエンザワクチンの接種
予防接種を受けることで、インフルエンザに感染しにくくなるほか、感染してしまっても、重症化を防げると考えられています。ただしワクチンを接種してからその効果が期待できるまでには2週間程度かかるため、流行前に接種を済ませておくことが必要です。摂取回数は、13歳未満は2回、13歳以上は1回が原則です。例年、12月ごろから流行し始めるので、11月~12月中旬までには受けておくようにしましょう。

●手洗いと手指の消毒
インフルエンザウイルスは、ドアノブや電車のつり革など身近な物に付着しています。それらを介して接触感染する可能性があるため、外出先から帰った時や、調理をする前などには念入りに手洗いをしましょう。この時必ず石けんを使い、爪と指の間や、指と指の間、手首までしっかりと洗い、十分な水ですすぐようにしてください。外出先などですぐに手洗いができない時には、アルコールタイプの手指消毒液やジェルなどを使う方法も有効です。

●マスクの着用
感染者のくしゃみや咳の飛沫を直接浴びるリスクを下げるため、外出時はマスクを着用しましょう。マスクを着用することで、口腔内の保温や保湿の効果も得られるので、気道の防御機能を助けてくれます。なお、インフルエンザに感染した人自身も、マスクをすることによって感染の拡大を抑えることができます。周りの人にウイルスを広げないためにも、マスクを着けるようにしましょう。

●規則正しい生活
免疫力が低下すると、インフルエンザに感染しやすくなります。免疫力を低下させないため、十分な睡眠をとり、栄養バランスのよい食事を心がけて、規則正しい生活を送ることが大切です。

●人混みへの外出を控える
インフルエンザ流行時には、必要な時以外は繁華街など人混みへの外出は避けたほうが賢明です。どうしても欠かせない用事の場合は、先に紹介したマスクや手指のアルコール消毒剤などを活用して、感染リスクを下げるようにしましょう。

まとめ

インフルエンザウイルスの性質を知り、ウイルスが活動しにくい環境を作ることはインフルエンザ予防につながります。エアコンを使用する時には乾燥した環境にしないよう、加湿器などを使って適切な温度と湿度を保つようにしてくださいね。併せて予防接種や手洗いなども徹底し、ウイルスの侵入をしっかりとブロックしましょう。

木村医師よりコメント

感染症を予防する基本は、手洗いうがいです。とくに、インフルエンザウイルスが物についた場合、半日から2日程度感染力を保つともいわれており、不特定多数の人が触る物に触れた場合には手洗いが重要です。また、インフルエンザは冬の寒くて乾燥した環境を好みます。屋内では、加湿などの対策が必須。さまざまな点から予防を行って、感染症対策していきましょう。

監修者

医師:木村眞樹子

都内大学病院、KDDIビルクリニックで循環器内科および内科として在勤中。内科・循環器科での診察、治療に取り組む一方、産業医として企業の健康経営にも携わっている。総合内科専門医。循環器内科専門医。日本睡眠学会専門医。ビジョントレーニング指導者1級資格。

 

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