Vol. 34

HIV

12月1日は「世界エイズデー」です。エイズの蔓延を防ぐことと、HIV感染者やエイズ患者への偏見と差別を解消するためにWHO(世界保健機関)が1988年に制定したものです。この頃になると、多くの人々が胸などに「レッドリボン」をつけて街を歩くようになります。レッドリボンはエイズでなくなった人々への哀悼の気持ちとエイズで苦しむ人々を支援・理解しようという意思表示として使用されています。

ときどき、「HIVに感染した。エイズになった。」などと言う人がいますが、HIV感染者とエイズ患者は明確に分けて考えてほしいと思います。HIVに感染しただけであれば「HIV感染者」ということになります。HIV感染してから5~10年程度経過するとニューモシスティス肺炎やトキソプラズマ脳症といった重篤な合併症を経験するようになります。そのような人々を「エイズ患者」と言います。

HIVはHIVで汚染した血液を輸血されたとか、HIV感染者やエイズ患者と性交渉することで感染します。日本においてはゲイ行為による男性間の感染がHIV感染者およびエイズ患者の多くを占めています。従って、ゲイの人々への啓発は極めて大切と言えます。

HIVに感染するような行為があってから、2~6週間後にインフルエンザ様症状(発熱、頭痛、倦怠感、リンパ節腫脹など) が数日~4週間ほど続いた場合にはHIVの急性感染かもしれません。そのときにはHIV検査をしましょう。HIVの血液検査にはスクリーニング検査と確認検査があります。スクリーニング検査はどちらの医療機関でも実施できます。昔は感染してから検査陽性となるまで50日以上の経過が必要でしたが、現在は検査が進歩し、3週間程度で陽性となります。そのため、急性感染期のときに受診しても血液検査にて陽性を確認できるようになりました。ただし、スクリーニング検査では偽陽性(感染していないのに陽性となること)の可能性があるので、確認検査を実施することになります。

HIVの治療薬はかなり進歩しています。この治療薬が開発される前にはHIV感染症やエイズは「確実に死に至る病気」でした。しかし、現在は抗HIV薬での治療を継続すれば死亡することはなく、慢性感染症としてコントロールできるようになりました。ただ、HIV感染しても治療せずにエイズを発症してしまうと、死亡したり後遺症を残したりします。そのため、HIV感染の早期発見は大変重要であるということになります。