ウイルス性胃腸炎

ノロウイルス感染症 Norovirus Infections

ノロウイルス感染症
  • 流行時期

    例年11月頃から発生件数が増加しはじめ、12~3月が発生のピークとなります。

  • 主な症状

    主な症状は、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛です。突然、吐き気や嘔吐を発症し、続いて下痢・腹痛が起こってくるのが特徴です。まれに発熱を伴うこともあります。症状の持続は、3日程度と短く、予後は良好です。しかし、体力の弱い乳幼児や高齢者などでは、下痢による脱水症状や合併症により重症化することがあります。なお、感染しても軽い風邪のような症状だけの場合や、自覚症状のない場合もあります。

  • 原因ウイルス

    ノロウイルス感染症は、ウイルスの中でも特に小さく丸い形をしているのが特徴の「ノロウイルス」によって引き起こされる感染症です。ノロウイルスは、一般的には、牡蠣などの二枚貝を原因とする「食中毒」の原因ウイルスとして注目されていますが、最近は、ヒトからヒトへの感染や汚染された器具が原因で感染する「感染症」としても重要視されてきています。
    潜伏期間は、通常1~2日以内です。

  • 好発年齢

    乳幼児から成人・高齢者まで、年齢に関係なく発症します。

  • 初診に適した科

    内科,消化器内科,小児科。注1)

  • 感染経路

    汚染された食品が原因となる「食中毒」による感染経路と、感染者のふん便や吐物が原因となる「感染症」の経路があります。

    食中毒経路

    • 汚染された二枚貝の生食あるいは不十分な加熱のものを食べた場合
    • 汚染された調理器具や手指を介して、二次的に汚染された食品を食べた場合

    感染症経路

    • 患者のふん便や吐物の処理後に手洗い・手指消毒が不十分なことにより、汚染された手指を介して接触感染する場合
    • 汚染された箇所(患者が用便後などに触れたドアノブやテーブルなど)に触れることで、手指が汚染されてしまう間接的な接触感染の場合
    • 患者のふん便や吐物の乾燥により、ウイルスが空気中に漂い、それを吸い込むことにより空気感染する場合
  • 予防方法

    ノロウイルスは感染力が強く、10~100個という少量でも感染すると考えられています。感染したノロウイルスは腸管内で増殖し、患者の糞便や吐物1g中には、100万個から10億個ものウイルスが含まれていることがあります。また、症状がおさまっても2~3週間程度はウイルスを排出し続けることがあります。このため、患者からの二次感染にも注意が必要です。

    手洗い・手指消毒

    • 感染にかからないため、うつさないためには、手洗い・手指消毒が何よりも重要です。調理や食事の前、トイレの後など、こまめに石けんを使ってしっかりと手洗いをします。なお、石けんでの手洗いの後、アルコール手指消毒剤を使用するとより万全です。水の使えない状況でも活用してください。アルコール手指消毒剤での手指消毒を2~3回行うことで消毒効果が得られると推測されます。

    便や嘔吐物の処理

    • 便や吐物の処理をする際は、使い捨ての手袋とマスクを着用します。ウイルスが飛び散らないように、ペーパータオルなどで静かに拭き取り、漏れないようにビニール袋でしっかり封をして廃棄します。便や吐物が付着した床などは、次亜塩素酸ナトリウム(0.02%)や消毒用エタノールで浸すようにして拭き取ります。いずれの消毒剤であっても2~3回の消毒が必要です。消毒する対象物(金属などには、次亜塩素酸ナトリウムは使用できません)によって、消毒剤を選択してください。なお、じゅうたんなどには、スチームアイロンで対応します。処理後の手洗い・手指消毒は十分に行いましょう。

    便座やドアノブなどの環境の消毒

    • ノロウイルスは、環境中でも長期間生存できると考えられており、環境の消毒も大切です。できるだけ頻繁に、次亜塩素酸ナトリウム(0.02%)や消毒用エタノールを用いて、2度拭き消毒をします。
  • 消毒剤に対する
    抵抗性

    ノロウイルスは、色々な消毒剤に対して高い抵抗性を持つと考えられているウイルスで、一般的に「アルコール(エタノール・イソプロパノール)は効きづらく、塩素系の消毒剤(次亜塩素酸ナトリウム)を主に用いる」という認識が広まってきているようです。しかし、塩素系の消毒剤は食器や床などの消毒には使用できますが、手指など人体に使用すると手荒れを引き起こす可能性がありますので、手指の消毒にはアルコールを用いることが好ましいと考えられます。なお、最近の研究では、80vol%エタノール(消毒用エタノール)でもノロウイルスの代替ウイルスのカリシウイルスやマウスノロウイルス注2)に対して、ある程度の消毒効果があることが示されており、実際の医療現場ではより効力を高めた酸性アルコール製剤の活用も一般的になっています。

注1)
医療機関によって診療科目の内容は異なりますので、受診前にご確認ください。
注2)
ノロウイルスは細胞培養ができないため、消毒剤の消毒効果を検討することができません。このため、消毒剤の消毒効果の検討には、類縁のカリシウイルスや、マウスノロウイルスを用います。

【参考資料】

国立感染症研究所感染症情報センター
病原微生物検出情報(月報):IASR / 感染症発生動向調査週報:IDWR感染症の話、過去10年間との比較グラフ(週報)

このカレンダーは、過去に観察された感染症の流行時期を示したものです。
流行時期は、年によって大きく変わることもあるので、最新の情報にご注意ください。