Vol. 16

動物園

夏休みや休日になると、動物園には多数の親子が訪れます。子どもたちはライオンやペンギンなどを興味深く見ています。ときどき、動物触れ合いコーナーがあって、そこで子どもたちは動物に直接触れることができるのです。動物と触れ合うことは子どもの情緒教育に大変有効であり、子どもたちには生き物を大切にする心が育ちます。しかし、動物には何らかの病原体が生息している可能性があることを認識しなければなりません。例えば、下痢気味の仔牛はクリプトスポリジウム、鳥類はキャンピロバクター、爬虫類はサルモネラを持っています。また、腸管出血性大腸菌も問題となることがあります。そのため、動物に触れた後には手洗いをしなければなりません。動物に触れた手で、手洗いもせずに食事をすることは大変危険なことなのです。特に、幼児は「病気の危険性の認識がないこと」「手洗いが不十分なこと」「濃厚な監督がなされていないこと」「手を口に入れる行為をすること(おしゃぶり使用、親指しゃぶり)」ということから、感染する危険性が高いことが知られています。また、幼児が感染すると重症になる危険性が高いので注意が必要です。

遊園地、農場、動物園などに訪れる人々での消化管感染症の集団発生がよく報告されています。この場合、ウシ、ヒツジ、ヤギなどが感染源となっていることが多いのですが、爬虫類や両生類なども感染源となっています。ここで問題となる病原体は口から入り込んでいます。動物の毛や皮膚、唾液には糞便に含まれている病原体が付着しているので、それらに触ったり、餌を与えたり、動物になめられたりしたときに感染します。動物の寝わら、床、柵が汚染していて、そこに触れることによって、衣類や靴に病原体が付着してしまうこともあります。また、飲食物(生ミルクや飲料水など)が糞便に汚染されることによって感染することもあります。

下痢している動物に触れないということは大変重要な対策です。しかし、腸管に病原体を持っている動物すべてが何らかの症状があるわけではなく、無症状の動物もいます。そのような動物もまた病原体を糞便のなかに排出しているので、周辺の環境が汚染してしまうのです。従って、動物に触れ合う区域では常に手洗いすることが大切であり、そのような感染症について教育することも重要です。また、遊園地、農場、動物園などでは、動物の触れ合い区域と飲食区域の区分けを徹底する必要があります。