Vol. 17

身体障害者補助犬

病院内で身体障害者補助犬を見かけることがあります。外来待合室やCTなどの検査室で待っていたり、透析室では透析機械の近くでおとなしく座っています。身体障害者補助犬とは身体障害者を助ける犬のことで、盲導犬、聴導犬、介助犬があります。「盲導犬」は視覚障害者を目的の場所まで安全に歩行できるように誘導します。「聴導犬」は聴覚障害者のために、ブザー音、電話の呼出音などを聞き分けて、その人に必要な情報を伝えます。必要に応じて音源への誘導をおこないます。「介助犬」は肢体不自由により日常生活に著しい支障がある身体障害者のために、物を拾い上げて運搬したり、着脱衣の補助などを行ないます。これらの身体障害者補助犬は厚生労働大臣が指定した法人から認定を受けています。

平成14年に身体障害者補助犬法が施行され、公共交通機関や公共施設に補助犬を同伴できるようになりました。そして、平成15年からは不特定かつ多数の人々が利用するホテル、デパート、レストランなどにも拡大されました。この法律には「不特定かつ多数の者が利用する施設を管理する者は、当該施設を身体障害者が利用する場合において身体障害者補助犬を同伴することを拒んではならない」と記載されています。病院は不特定多数の人々が訪れる施設なので、この法律の例外とはなりません。従って、病院に身体障害者補助犬が立ち入ることができるのです。

病院内に身体障害者補助犬が入ると動物に由来する病原体による院内感染が発生するのではと心配する人もいるかもしれません。しかし、健康で清潔であり、ワクチンが接種され、十分に訓練された身体障害者補助犬が感染源になる危険性は極めて少ないのです。むしろ、咳や熱があるにも拘わらず咳エチケットをしない人やトイレの後に手洗いしない人の方が感染源になりやすいのです。そのため、病院では外来や病棟において身体障害者補助犬が立ち入ることが許可されています。ただし、手術室や特殊な治療区域(熱傷病棟や集中治療室など)のような入室制限のある区域には、補助犬は立ち入らない方針が取られています。

入院していたり、入院患者のお見舞いに病室に訪れたときに、病室に身体障害者補助犬が立ち入っても驚かないでください。感染源になることはないからです。この場合、補助犬が可愛いからといって撫でたり、口笛を吹いたり、餌を与えたりしないようにしてください。彼らは勤務中なので、勤務に集中させてあげてください。