Vol. 64

夏に花火をみていたり、夕涼みをしていたりすると、蚊に刺されることがあります。とにかく、痒いので蚊よけスプレーや線香などにて刺されないようにします。蚊の問題は痒いだけではありません。現在、中南米で問題となっているジカウイルス、数年前に日本でも問題となったデングウイルス、アフリカや東南アジアで多くの人々を苦しめているマラリアなどの病原体を人間の体内に注入するといった健康被害の原因となっているのです。

特に、ジカウイルスは妊娠中に感染すると、胎児が小頭症となる危険性があるので、国内に病原体が入り込んで蔓延することは是非とも阻止しなければなりません。特に、8月にはブラジルにてオリンピックが開催されるため、多くの人々がブラジルに観光に行きます。そして、現地で蚊に刺されてジカウイルスに感染し、そのまま帰国すればウイルスも国内に持ち込むことになります。感染した人を日本の蚊(ヒトスジシマカ)が刺すことによって、蚊が感染し、その蚊が他の人々を刺すことによって、ジカウイルスが人から人に伝播してゆくのです。そのため、蚊を駆除することがとても大切なのです。

テレビなどをみていると、公園などで殺虫剤を噴霧している状況が放映されることがあります。しかし、殺虫剤にて蚊を殲滅すれば安心と思ってはいけません。殺虫剤は成虫の蚊を殺すことはできますが、卵は健在です。蚊の駆除では卵のコントロールがとても大切なのです。

蚊は「卵⇒幼虫(ボウフラ)⇒蛹(さなぎ)⇒成虫(飛ぶ蚊のこと)」というように成長してゆきます。幼虫は1週間程度で蛹に変化し、2日で蚊となります。そのため、卵があちらこちらにある限り、殺虫剤などで成虫の蚊を駆除したとても、蚊の数は2週間で元通りになってしまうのです。蚊は小さな容器の側面に産卵します。そこで、雨が降ったりして容器の中に水が溜まってきて、卵が水浸しになると孵化してボウフラになるのです。

卵は乾燥した状況でも何カ月も生き続けることができます。そして、家の周囲に産卵された卵をすべて殺滅する方法はありません。最も効果的な方法は、蚊が産卵する場所をなくしてしまうことです。そのため、水が溜まるような容器が家の周辺などに存在しないように監視することが大切なのです。例えば、古タイヤ、玩具、鉢植えの容器、動物の餌容器などです。もし、そのような容器を見つけたら、廃棄したり、雨水が溜まらないようなところに移動させるようにします。蚊の寿命は1~2ヶ月ほどですが、その生涯で数十個の卵を5回産卵するので、決して油断できません。