Vol. 65

消毒薬

消毒薬は家庭でも病院でも用いられている化学物質です。皮膚や医療器具に付着している病原体を殺菌するための消毒で用いられます。環境表面を消毒するために用いられることもあります。ここでは消毒薬の代表であるアルコールとポビドンヨードについて解説します。

最も身近な消毒薬はアルコールであるといって間違いないでしょう。病院では採血前の皮膚消毒や輸液ルートの接合部の消毒などに用いられています。また、手指消毒薬としても、頻用されている消毒薬です。アルコール手指消毒薬を配備している家庭も多いかと思います。アルコールは病原体の蛋白を変性することによって効果を発揮します。蛋白は水のないところでは容易には変性しないので、アルコールのなかに水が含まれている必要があります。最も効果的なのは50~80%のアルコール濃度であり、これ以上の濃度では殺菌力が低下します。アルコールは即効性があり、皮膚や器材などに接触すると迅速に効果を示します。

ポビドンヨードも病院や家庭で用いられている消毒薬です。皮膚消毒のほかに、うがいにも用いられています。皮膚への刺激性が低く、比較的副作用も少ない消毒薬です。皮膚に塗布すると褐色の被膜が形成されて、持続的な殺菌効果が発揮されます。ポビドンヨードで皮膚消毒をしたら、塗布後乾燥まで2分以上待たなければなりません。そうしなければ、消毒効果が不十分になってしまいます。アルコールは皮膚にも器材にも消毒薬として用いることができますが、ポビドンヨードは皮膚に使用するのであって、器具などに使用することはできません。

長期間の抗菌薬の内服や点滴をしていると、耐性菌が問題となってきますが、消毒薬では細菌の耐性化は大丈夫なのでしょうか?これについては殆ど心配ありません。「抗菌薬」は病原体の特定の部分に作用して効果を示しますが、「消毒薬」は様々な部位に作用して効果を表します。そのため、細菌には消毒薬に耐性となる余裕が与えられないのです。万が一、耐性化したとしても問題は容易に解決できます。「抗菌薬」は体内に投入されることによって効果を発揮するので、耐性化したときに抗菌薬の投与量を増加すると、副作用が問題となってきます。しかし、「消毒薬」は皮膚の表面や器材に用いられ、体内に投入されることはありません。そのため、耐性菌が発生したとしても、耐性度を上回る濃度で消毒すればよいのです。このようなことから、日常的にアルコール手指消毒薬にて手指消毒を実施していても、耐性菌の心配はないのです。