各種消毒薬の特徴

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10.両性界面活性剤

特徴

両性界面活性剤とは、塩酸アルキルジアミノエチルグリシンやアルキルポリアミノエチルグリシンなどの化合物の総称である。 これらの化合物のうち、汎用されているのは前者の塩酸アルキルジアミノエチルグリシンである。

両性界面活性剤は、文字どおりその界面活性作用により強い洗浄効果を示す。
このため、本剤は洗浄を兼ねた消毒に汎用されている(図26)。

また、本剤はクロルヘキシジンや塩化ベンザルコニウムと異なり、結核菌にも抗菌力を有している(図271~4)。 このため、本剤は結核領域での環境消毒にも使用可能である。なお、本剤は脱脂作用が強いため、手指消毒にはあまり適さない

図26. 両性界面活性剤は洗浄と殺菌の2つの効果を示す

両性界面活性剤は洗浄と殺菌の2つの効果を示す

図27. 微生物の消毒薬抵抗性の強さと、両性界面活性剤の抗菌スペクトル

微生物の消毒薬抵抗性の強さと、両性界面活性剤の抗菌スペクトル

*両性界面活性剤は結核菌にも有効である。

消毒対象

(1)器材、用具

両性界面活性剤は洗浄効果が強いので、器材の洗浄を兼ねた消毒に適している。
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などの一般細菌やカンジダなどの酵母様真菌が対象なら、0.1%液への30分間浸漬などを行う5,6) 。また、結核菌も対象なら、0.2%~0.5%液への1~2時間浸漬を行う1~4)

また、浴槽、沐浴槽および足浴バケツなどの汚れが付きやすい用具の消毒に適している(図28)7)
なお、本剤の簡易的な使用法として、10%製品の原液をスポンジに含浸させて洗浄を行うといった方法があげられる。洗浄後に5分間以上放置してから水洗いを行う。

図28. 両性界面活性剤は浴槽などの消毒に適している
両性界面活性剤は浴槽などの消毒に適している

(2)環境

両性界面活性剤は環境消毒にも使用できる。一般細菌や酵母様真菌が対象なら0.2%液で、結核菌も対象なら0.5%液で清拭する。

結核菌のおもな感染経路は空気や飛沫である。したがって、結核患者の周辺環境の消毒は重要ではない。 しかし、床などに落下した結核菌がゴミやホコリなどとともに舞い上がり、感染源になる可能性はある8)。したがって、排菌がなくなる化学療法開始後14日間程度までは、結核患者の周辺環境の消毒は必要である。

取り扱い上の留意点

微生物汚染を防止する

両性界面活性剤は不適切な取り扱いにより細菌汚染を受ける。典型的な汚染パターンは、本剤含浸の綿球やガーゼを長期間にわたって分割またはつぎ足し使用した場合である。
図29には、0.2%液含浸ガーゼを6ヶ月間にわたって分割・つぎ足し使用したために生じたAlcaligenes xylosoxidans汚染例を示した。
水分含有のガーゼからしみ出た栄養分を利用して、本菌が増殖したと推定される9)

両性界面活性剤などの低水準消毒薬含浸綿球(ガーゼ)の細菌汚染防止策として、調製時には乾燥済みの容器を用いることや、調製後24時間以内に廃棄することなどがあげられる。

図29. 0.2%両性界面活性剤の含浸ガーゼの細菌汚染例
6ヶ月間にわたって分割・つぎ足し使用を行っていたガーゼ アクロモバクター

6ヶ月間にわたって分割・つぎ足し使用を行っていた。

器材へ残留しないようにする

局所麻酔薬の投与に用いた注射筒に両性界面活性剤が残留していたために、化学性髄膜炎が生じた2症例が報告されている10)
両性界面活性剤で洗浄・消毒後の注射筒のすすぎ(リンス)が不十分なために生じた有害事象であった。

注射筒は使い捨て製品を使用するのが望ましい。やむを得ずくり返し使用するのであれば、洗浄や消毒に用いた薬剤の十分なすすぎ(リンス)が必要である。

引用文献

  1. 市川 章子,美誉志 康:各種消毒薬の結核菌に対する殺菌効果の検討,防菌防黴 1980; 8, 143-147.
  2. 李 英徹:諸種消毒剤の結核菌に対する殺菌効果,結核 56:567-576,1981.
  3. 立脇 憲一,他:両性界面活性剤「Tego-51」の各種細菌に対する消毒効果,防菌防黴 1981; 9, 465-469.
  4. 谷 克昭:結核菌に対する各種消毒薬の殺菌効果の検討,基礎と臨床 1986; 20, 768-772.
  5. Oie S, Huang Y, Kamiya A, et al: Efficacy of disinfectants against biofilm cells of methicillin-resistant Staphylococcus aureus. Microbios 1996; 85, 223-230.
  6. Oie S, Kamiya A, Tomita M, et al: Efficacy of disinfectants and heat against Escherichia coli O157:H7. Microbios 1999; 87, 7-14.
  7. Oie S, Yanagi C, Matsui H, et al: Contamination of environmental surfaces by Staphylococcus aureus in a dermatological ward and its preventive measures. Biol. Pharm. Bull. 2005; 28, 120-123.
  8. Rubin J : Disinfection, Sterilization, and Preservation , 4th ed, pp 377-383, 1991, Lea & Febiger, London.
  9. Oie S, Yoshida H, Kamiya A: Microbial contamination of water-soaked cotton gauze and its cause. Microbios 2001; 104, 159-166.
  10. Nishimura C, Tsubokawa K, Kasama S, et al: Two cases of chemical meningitis following spinal anesthesia. J. Anesth. 2001; 15, 111-113.