2022.07.20 感染症・消毒

サル痘

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欧米を中心に感染報告が相次いでいる「サル痘」。2022年6月27日にWHO(世界保健機関)が更新した情報1)では、今年に入って感染の確認は3400人を越え、1人の死亡が報告されました。

2022年6月29日現在、日本国内ではサル痘の感染者は確認されておりません2)が、隣国の韓国や台湾では入国者で感染事例が報告されています3)。日本でも海外からの観光客の受け入れが6月半ばから再開されており、サル痘の感染者が今後入国してくることに備えておく必要があります。

この記事では、これまでのサル痘の感染事例で判明していることや、今回の欧米を中心に広がっている感染事例でみられるサル痘の特徴について、厚生労働省や国立感染症研究所など国内の公的機関のホームページのほか、WHOのホームページで公表されている重要ポイントを抜粋して紹介します。

各国の感染状況

WHOが2022年6月27日に更新した情報1)によりますと、サル痘の感染報告者は2022年1月1日から6月22日までに50の国と地域で3413人にのぼり、このうちのほとんどが2022年5月以降に報告されています。また、ナイジェリアで1人の死亡が報告されています。

地域別では、感染の確認はヨーロッパ諸国に多く、イギリスが793人、スペインが520人、ドイツが521人、ポルトガルが317人、カナダが210人、フランスが277人、オランダが167人、アメリカが142人などとなっています。また、アフリカ地域では8か国で73人の感染者と1人の死亡が報告されています。
サル痘は、これまではアフリカで散発的に発生する風土病でしたが、今年に入ってからは感染報告例のなかった欧米を中心に感染が広がっています。

また、欧米を中心に現在確認されているのは、重症化の程度が比較的低い、西アフリカ系統群のウイルスであるということが、ウイルスの遺伝子解析で判明しています。

日本での感染報告

サル痘は日本では感染症法上の「4類感染症」に指定されており、医師がサル痘患者と診断した場合、患者の発生を保健所にただちに届け出ることになっています。
厚生労働省によると2)、感染症発生動向調査で集計が開始された2003年以降、国内のサル痘の感染は報告されておりません。

ただ、日本でも警戒を強めており、厚生労働省は都道府県や日本医師会などに対して事務連絡を発出し、サル痘を疑う患者の対応について相談や情報提供があれば厚生労働省への報告とともに、確定診断のための検体搬送等の協力を求めています。

サル痘について

サル痘の概要について以下に抜粋して紹介します。なお、国立感染症研究所のホームページ4)には詳細が記述されており、そちらも参照してください。

サル痘の原因ウイルス

サル痘は、「サル痘ウイルス」に感染することで起こる急性発疹性の疾患です。このウイルスはポックスウイルス科のオルソポックスウイルス属に属し、二本鎖DNAを持つエンベロープウイルスです。
オルソポックスウイルス属には、サル痘ウイルスのほか、天然痘ウイルス、ワクチニアウイルス、牛痘ウイルスなどが属しています。
サル痘ウイルスには2種類の遺伝的系統群があり、コンゴ盆地(中央アフリカ)系統群と西アフリカ系統群に大別されます。このうち、コンゴ盆地(中央アフリカ)系統群は西アフリカ系統群に比べて重症化しやすく、ヒトからヒトへの感染性が高いと考えられています。

サル痘の症状

サル痘ウイルスの潜伏期間は5~21日(通常7~14日)で、潜伏期間の後、発熱、頭痛、リンパ節腫脹、筋肉痛などが1~5日間続き、その後に発疹が出るという経過をたどります。その発疹は、顔面から始まって体じゅうに広がります。発疹の初期は平たんですが、徐々に膨らんでいき(丘疹)、水疱(透明な液体で満たされた状態)、膿疱化(淡黄色の液体で満たされた状態)、痂疲(かさぶた様の乾燥した状態)へと順次進行し、発症から2~4週間で治癒するという経過をたどります。

ただ、WHOによると1)、今回の感染拡大のなかで見られる症状のなかで、症状が少数または単一であるケースや、発疹が性器や肛門の周辺などに始まり、それ以上広がっていないケース、発熱などの前に発疹が出現するケースなどがみられており、これまでのサル痘の臨床像とは異なっている(=非定型である)との見方もあります。

サル痘の治療法

海外では、ある種の抗ウイルス薬で、サル痘への有効性とヒトへの安全性が確認されているものの、我が国では2022年6月末の時点で薬事承認された治療薬はありません。そのため、日本でサル痘の感染者が確認された場合には、症状に応じた対症療法がとられることになります。

サル痘の感染経路は?

サル痘ウイルスの主な感染経路は接触感染と飛沫感染であると考えられています2及び4)
アフリカのこれまでの感染例で確認されたところによりますと、サル痘ウイルスがヒトに感染するケースは、サル、ネズミ、リスなどの感染した動物に噛まれたり、感染動物の血液や体液、発疹部位に触れたりすることで起こっています。

また、ヒトからヒトへの感染は稀ですが、感染した人の体液や発疹、血液との接触(性的接触を含む)のほか、感染者が使用した寝具や衣類などへの接触や、感染者との近接した対面での飛沫によっても、サル痘ウイルスに感染する可能性があると考えられています。

サル痘の感染対策は?

海外からの観光客の受け入れが再開し、感染者が発症の前に(=ウイルスの潜伏期間中に)入国してしまう可能性はゼロではありません。ウイルス感染から身を守るためにはどのような点に注意していけばよいか、以下に説明していきます。

感染経路を意識した対策を心がける

他の感染症でも言えることですが、感染者との密接な接触や感染者と同じ空間に長時間居て対面で会話をすることは避けましょう。
そして、アルコールベースの消毒薬を用いた手指衛生や石けん手洗いを励行する接触感染対策、また、マスクの着用や咳エチケットで飛沫感染対策を行うなど、これまで行ってきている基本的な感染対策を続けていくことが重要になります。

また、サル痘ウイルスは感染者の使用したリネン類に接触することから感染するケースも報告されています4)。そのため、サル痘の疑い例が身近で発生した場合には感染者が使用した寝具やタオルの共用は避けるとともに、リネン類や着用していた衣類には素手で直接触らず、手袋などをしてから袋に入れて持ち運び、洗濯するようにしましょう。

多くの方の手が頻繁に触れる場所はアルコールや塩素系の消毒薬などで消毒をしておくと良いでしょう。

天然痘ワクチン

WHOによると5)、過去に接種が行われた天然痘のワクチンがサル痘に対しても高い効果があり、サル痘の発症予防効果は85%あると言われています。
ただし、日本では天然痘ワクチンの定期接種は1976年を最後に行われておらず6)、その当時に接種対象だった、今の40代後半以上の世代ではサル痘に対する免疫の恩恵があるかもしれません。

サル痘が疑われたら?

厚生労働省2)は、サル痘を疑う症状が出てきた際は最寄りの医療機関に相談するよう呼び掛けています。また、医療機関を受診するときはマスクを着用し、発疹部分をガーゼなどで覆ったうえで医療機関に出向くようにしてください。

まとめ

「サル痘」について、2022年6月29日時点で公的機関が発表している情報をまとめました。ここで紹介した感染対策を改めて意識・徹底することが重要です。また、感染が疑われる場合には医療機関に速やかに相談するようにしましょう。

なお、「サル痘」に関する情報は定期的に更新されます。最新情報は典拠先にアクセスし、入手するようにしてください。

(典拠)
1)WHO. Multi-country monkeypox outbreak: situation update, 27 June 2022:2022年6月28日アクセス
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2022-DON396

2)厚生労働省.サル痘について:2022年6月29日アクセス
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/monkeypox_00001.html

3)外務省海外安全ホームページ.サル痘の発生状況(複数国での発生)(その7):2022年6月29日アクセス
https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcwideareaspecificinfo_2022C057.html

4)国立感染症研究所.サル痘とは:2022年6月28日アクセス
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/408-monkeypox-intro.html

5)WHO.Health Topics, Monkeypox:2022年6月28日アクセス
https://www.who.int/health-topics/monkeypox#tab=tab_3

6)国立感染症研究所.天然痘(痘そう)とは:2022年6月28日アクセス
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/445-smallpox-intro.html

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